39歳男性運転手の9級外貌醜状について67歳まで35パーセントの後遺障害逸失利益を認めた さいたま地裁平成27年4月16日判決
さいたま地裁 平成27年4月16日判決(控訴中)
事件番号 平成26年(ワ)第1072号 損害賠償請求事件
<出典> 自保ジャーナル・第1950号
(平成27年9月24日掲載)
1 被害者
事故当時39歳男子運送会社運転手
平成23年5月26日発生の事故により平成25年2月20日症状固定した口唇部挫創後瘢痕(口唇付近の線状痕)について「外貌に相当程度の醜状を残すもの」として,別表第二第9級16号に該当するものとされた
2 争点
男性9級外貌醜状において後遺障害逸失利益が認められるか。
3 判決該当部分
原告の後遺障害である外貌醜状は、口唇部に残存している5㌢㍍以上の線状痕であり、人目に付く程度のものであること、原告の現在の職業が自動車運転手(貨物の搬出、搬入、運送)であるところ、原告の後遺障害である外貌醜状によって、初対面に近い顧客との折衝に消極的になっていること、社内の評判が落ちて将来の昇進や転職に影響したりする可能性が否定できないことが認められる。
そして、男性においても外貌醜状をもって後遺障害とする制度が確立された以上、職業のいかんを問わず、外貌醜状があるときは、原則として当該後遺障害等級に相応する労働能力の喪失があるというのが相当であり、原告について当該後遺障害等級の定める労働能力の喪失を否定するような特段の事情があるとまでいえないから、併合9級相当の労働能力の喪失があるものというのが相当である。
4 コメント
具体的な解決としては妥当だったのであろうと思われます。
しかし,本件判決は,「男性の外貌醜状を持って後遺障害とする制度が確立しており,原則として労働能力の喪失があるというのが相当である」とまで言い切っています。
だが,一般論としてここまで言い切れるかどうかは,判決例や学説及び実務において流動的であります。
したがって「本判決を男子の外貌醜状の一般的な判断として一般化することはできない」と言えます。(ぎょうせい 「交通賠償実務の最前線---日弁連交通事故相談センター」p155)