Q.事故でむち打ちになったので入院をしたいのですが,認められますか。

[むち打ち,むち打ち症,入院,外傷性頸部症候群,頸椎捻挫]

A.


年齢,症状,家族構成等から認められる可能性があります。

1 はじめに

むち打ち症(頸椎捻挫,外傷性頸部症候群)で入院治療をすると,加害者側は,症状が重症ではないこと,通常の治療期間を超えてしまうこと,療養態度が良くないことを理由として入院治療の必要性を争うことが多いと言えそうです。

しかし,最高裁昭和63年4月21日判決では「治療行為が適切であったかは,臨床現場で実際に治療を行った医師の裁量を尊重すべきであって,事後的にその治療が必要適切であったかを画一的に決めるべきではない。」

従って「治療当時の医学水準からみて明らかに不合理ではない限りは治療行為が過剰であったとは言えない。」としており(判例時報1276号44頁,判例タイムス667号99頁),むち打ち症(頸椎捻挫,外傷性頸部症候群)で入院治療をすることも,その点から認められる可能性があると言えます。


2 判決で入院治療を認めた事例の傾向

 患者としての被害者の痛みなどの訴えが,医学的に見ても合理性があり,入院治療の効果が期待できる場合には,入院を認める傾向にあると言えます。東京地裁 平成13年5月30日判決(リンク)
  

症状が,頸椎捻挫に特有の吐き気,嘔吐があるものについては,入院して点滴治療や検査をするために入院治療を認めております(神戸地裁平成10年6月25日判決,東京地裁平成10年6月8日判決)。

 肩のはりや頸部から肩部にかけて強い痛みがあり自宅での通院治療では十分でないとして入院治療を認めております(神戸地裁平成10年10月8日判決)。

あるいは被害者の年齢や治療経過と考えると頑固な痛みと心身の不調が続いたので17日の入院の必要性を認めた例(大阪地裁平成14年5月9日判決)もあり,これらは症状に着目したものと言えます。

  さらに,入院は検査と安静下での牽引の施術を目的とした53日の入院を認めた例(大阪地裁平成14年6月19日判決)のように,治療方法に着目した例があります。

  また入院治療が51日の事例,さらに入院治療が82日の事例についても,入院および治療内容について医師の裁量の範囲として一部を認めた判決もあります(いずれも,山形地裁平成13年4月17日判決です。51日の事例は17日の範囲,82日の事例は28日の範囲で認めました。)。

これは実際に治療した医師の裁量を重視したものと言えます。


  但し,入院が認められるとしても,症状あるいは入院中の外泊を理由に一部を否定されることもあります。また,個室入院をした場合には差額料は認めれることはまず考えにくいので注意が必要です。

この様に,頸椎捻挫の場合でも,入院治療が一定の範囲で認められることが裁判例から分かります。

なお,最近では,賠償問題としてよりは,きベッド数不足等の理由から病院側が入院をさせないという現実的な問題があります。

3 結論

むち打ち症,つまり頸椎捻挫について,症状や治療内容あるいは年齢等により一定期間の入院が認められることはあります。

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