Q.むち打ち(頚椎捻挫)の中で脊髄症(脊髄損傷)型というのはどういうものですか。
脊髄症(脊髄損傷)型というのは,骨折脱臼はなくとも,むち打ち(頚椎捻挫)の衝撃で背骨の中の脊髄が傷ついて,重い障害が起こるものです。
後遺障害12級(13号)から,さらに重い等級となることがあります。
発症には,既存の疾病も関係します。
その場合には,素因減額と背中合わせとも言えそうです。
頚椎の支持組織である筋肉,靱帯が衝撃の外力に耐えきれず,完全に断裂をしてしまうと,頚椎は正常な骨の位置関係が保てなくなります。
そして,脱臼あるいは骨折を生じます。この時に,脊柱管は骨がずれてしまったために,その部分では狭くなってしまいます。
脊髄は脊柱管の中を通っているために,狭くなった部分で損傷されてしまうのです。
なお,後縦靱帯骨化,脊柱管狭窄等の既存の病態があるところに,衝撃を受けると,その衝撃がそれほど強いものではなくても脊髄に損傷が生じることがあります。
2 脊髄症の診断ポイントは,どうですか。(クリックすると回答)
①上肢(手・腕・肩)のみならず下肢(腰,足)にも明らかな神経症状が存在すること
②膀胱・直腸障害の存在すること
脊髄には,その外側に脳からの命令を手,胴,足まで伝え,逆にこれらの部分からの感覚を脳に送る神経繊維があります。
そして膀胱,直腸の動きを調節する神経繊維もあります。
他方では,その内側には肩や上肢を動かす神経繊維の出発点となる神経細胞があります。
従って,脊髄が損傷を受けると,上肢だけではなく,胴,下肢の機能障害(麻痺です。)膀胱・直腸障害が発生します。
①上肢の症状
a)運動障害
上肢筋力が低下し,巧緻運動障害(食事,着替え,筆記等の細かい指の動きが必要な運動の障害),完全麻痺では損傷した随筋を動かすことができなくなります。
b)腱反射の異常(急性期には低下し,それ以降は亢進)
c)知覚障害
②下肢の症状
a)歩行障害,完全麻痺では歩行ができなくなります。
b)腱反射の異常(急性期には低下し,それ以降は亢進)
c)知覚異常
なお,上肢・下肢の知覚障害に関連して,こちらを参照して下さい。
☆腱反射(深部反射)異常の診断的な意義とは何ですか。脊髄損傷との関係はどうですか。---後遺障害賠償は,むさしの森法律事務所へ
(リンク)
☆表在感覚・深部感覚・複合感覚とは何ですか。この感覚障害は,後遺障害(後遺症)となりますか。また,脳損傷による感覚障害はどのようなものですか。---交通事故賠償は,むさしの森法律事務所(リンク)
③膀胱・直腸障害
排尿障害,排便障害です。
泌尿器の障害については,こちらを参照して下さい。
☆泌尿器障害とは何ですか。その後遺障害等級はどうなっていますか。---後遺障害賠償は,むさしの森法律事務所
(リンク)
この点は,こちらの記事をご覧下さい。
☆脊髄損傷とは何ですか。後遺障害(後遺症)はどうなりますか。-----後遺障害賠償は,むさしの森法律事務所
(リンク)
なお,中心性脊髄損傷の認定については,こちらの記事をご覧下さい。
☆中心性脊髄損傷として骨折・脱臼のない場合でも後遺障害として認められますか。また,認められたとしても素因減額で問題となりますか。---交通事故賠償は,むさしの森法律事務所
(リンク)