Q.起立性頭痛とは何ですか。
起立性頭痛と低髄液圧症候群との関連をめぐり,あるいは低髄液圧症候群であるかの診断をめぐり様々な議論と裁判例があります。
「起立性頭痛がない低髄液圧症候群」という概念が生まれて,議論が混乱している感があります。
しかし, 起立性頭痛があるとして認められれば,その原因として低髄液圧症候群があるかが初めて意味を持つと言えます。
起立性頭痛とは,国際頭痛分類の突発性低髄液圧症候群にならい,頭部全体及び,または鈍い頭痛で,座位または立位をとると15分内に増悪する頭痛とされております。(現時点での日本神経外傷学会の中間報告)
2 低髄液圧症候群との関連はどうでしょうか。 (クリックすると回答)
低髄液圧症候群との関連をめぐり,あるいは低髄液圧症候群であるかの診断をめぐり様々な議論と裁判例があります。
しかし,起立性頭痛がなくても低髄液圧症候群であるか否かが争点となってしまっている事例や裁判例が多くありますが,実際には,起立性頭痛であるか否かが重要であろうと思います。
慢性頭痛と起立性頭痛の関係についても,定義の混乱が見られるとの指摘もあります。
慢性頭痛であるとしても,それが起立性であるかどうかが問題であるはずが,頭痛一般に広げられている状況があります。
低髄液圧症候群という症例のあることは,認められています。
そして
①起立性頭痛
②髄液圧の低下
③ガドリウム造影剤による硬膜の増強効果
が,その3大兆候とされてきました。
ところが,この3つをすべて充たすもの以外に2つを充たすものという4種類の分類に変わり,その中から「起立性頭痛がない低髄液圧症候群」という概念が生まれて,議論が混乱している感があります。
しかし,「起立性頭痛がない低髄液圧症候群」というものが全く存在しないとまで言えないとしても例外中の例外と言えます。
起立性頭痛=低髄液合う症候群という両者は切っても切れない関係にあると言うべきであるというのが医学界では主流のようです。
つまるところ,低髄液症候群は起立性頭痛のメカニズムを説明するための概念であり診断基準と言うべきです。
4 起立性頭痛において低髄液圧症候群を主張する意味はありますか。 (クリックすると回答)
頚椎捻挫,いわゆるむち打ちによる症状を説明するものとして低髄液圧症候群が登場してきて裁判例としても肯定から否定へ,またその反転とめまぐるしいものがあります。
しかし,低髄液圧症候群に対するブラッドパッチの治療に関してその必要性・有効性については,治療費としての金額がさほど高額ではないことから,それほどの厳しい対立はないのが現状です。
また,後遺障害を説明するものとしても残存する症状についての判断ですので,他覚的所見として認められれば,12級に該当します。
従ってその限りでは意味があるとは言えます。
要するに,起立性頭痛があるとして認められれば,その原因として低髄液圧症候群があるかが初めて意味を持つと言えます。
その点から,起立性頭痛がない場合にはそもそも低髄液圧症候群を否定するのが判決の主流であることは当然と言えます。
(例えば,東京地裁 平成19年11月27日判決 平成16年(ワ)第8920号 損害賠償請求事件<出典> 自動車保険ジャーナル・第1717号 平成20年1月10日掲載)