Q.上肢・下肢の機能障害の認定についての原則とは何ですか。また,認定基準はどうなっていますか。

[主要運動,他動運動,伸展,参考運動,屈曲,後遺障害,機能障害,等級,自動運動]

A.

上肢・下肢にそれぞれ三大関節があり,その機能障害が後遺障害認定の対象となります。

機能障害の測定について
自動運動と他動運動とがありますが,原則は他動運動によります。
主要運動と参考運動とがありますが,原則は主要運動によります。

また,患側(怪我をした側)と健側との可動域の比較によります。

上肢・下肢の三大関節について,可動域等の部位・組み合わせにより後遺障害等級として格付けがされます。

続きを読む

1 自動運動と他動運動とは,どう違うのですか。   (クリックすると回答)


他動運動とは,外的な力によって動かせる可動域のことです。

自動運動とは,被験者が自分の力で動かせる可動域のことです。

原則としては,他動運動による測定値(他動値)によります。

しかし,麻痺や,どうしても我慢ができない痛みによる可動域制限のように他動値によることが難しい場合には自動運動による測定値(自動値)によります。

2 主要運動と参考運動とは,どう違うのですか。  (クリックすると回答)


各関節で関節の動きは様々なものがありますが,それらの運動は主要運動と参考運動に分かれます。

以下に,上肢・下肢(指を除きます。)について示します。

肩関節→ 主要運動=屈曲/ 外転・内転  参考運動=伸展/外旋・内旋

ひじ関節→ 主要運動=屈曲・伸展  参考運度なし

手(腕)関節→ 主要運動=屈曲・伸展  参考運動=橈屈/尺屈

前腕→ 主要運度=回内・回外  参考運動なし


股関節→ 主要運度=屈曲・伸展/外転・内転  参考運動=外旋・内旋

膝関節→ 主要運度=屈曲・伸展  参考運動なし

足関節→ 主要運度=屈曲・伸展  参考運動なし

3 等級認定の原則とはどういうものですか。  (クリックすると回答)


(1)等級認定は原則として主要運動により判断されます。

例外としては,主要運動の制限が等級表の対象から見てわずかに上回る場合には,参考運動の一つについて可動域角度が2分の1また4分の3以下に制限されていれば等級認定がされます。

そのわずかに上回る場合とは,各主要運動それぞれ5°,肩関節・手関節及び股関節の屈曲・伸展については10°を超える場合を言います。

(2)等級認定は原則として障害の残存した側(患側)と障害の残存していない側(健側)との可動域を比較により判断されます。

上肢・下肢のような左右がある部位の関節可動域の機能制限の認定は,障害の残存した側(患側)と障害の残存していない側(健側)との可動域を比較して行います。

しかし,事故前から他方の側に何らかの障害が既にある場合には,「健側」が存在しないために,平均的な運動領域である参考可能域角度との比較で判断されます。


4 3大関節の機能障害とは何ですか。  (クリックすると回答)


上肢・下肢,それぞれに3大関節があります。
その関節の動きが機能的に制限された場合には,その程度に応じて,後遺障害となります。なお,機能的に制限されることが必要であり,痛みによる場合には,ここでの機能制限には該当しません。

機能障害とは,それぞれの3大関節の動きの障害です。
3大関節とは,上肢(腕)=肩・ひじ・手首,上肢(足)=股・膝・足首です。

その程度と障害が両上肢あるいは両下肢に生じたのか,あるいは一方の上肢あるいは下肢に生じたかによって等級が認定されます。

なお,平成16年改正で,3大関節ではありませんが,上肢前腕の回外・回内運動が制限されている場合も関節の機能障害に準じて評価されています。

5 機能障害の認定等級はどうなりますか。  (クリックすると回答)


両(左右とも)上肢全廃→1級4号

両(左右とも)下肢全廃→1級6号

上肢3大関節すべて強直 (リンク)+手指全部用廃=一上肢全廃→5級6号

腕神経叢 (リンク)の完全麻痺=一上肢全廃→5級6号

下肢の三大関節のすべて強直=一下肢全廃→5級7号

強直あるいは完全弛緩性麻痺かそれに近いもの=一関節用廃→8級6号(上肢)・7号(下肢)

置換術 (リンク)で可動域2分の1以下=一関節用廃→8級6号(上肢)・7号(下肢)

可動域2分の1以下=一関節著しい機能障害→10級10号(上肢)・11号(下肢)

置換術で可動域2分の1を超える=一関節著しい機能障害→10級10号(上肢)・11号(下肢)

可動域4分の3以下=一関節機能障害→12級6号(上肢)・7号(下肢)

6  強直,用廃等のことばを説明して下さい。(クリックすると回答)


☆1 強直=関節が全く可動しないか。またはこれに近い状態,つまり健側の可動域の10%程度以下(角度5°単位で切り上げて計算)に制限されたもの

☆2 完全弛緩性麻痺に近いもの=他動では可動するが,自動では健側の可動域の10%程度以下(角度5°単位で切り上げて計算)に制限されたもの

☆3 関節の用廃=主要運動のすべてが強直したもの

☆4 著しい機能障害あるいは機能障害は,主要運動のいずれか一方が制限されていれば良い。

☆5 肩関節の場合には,肩甲上腕関節が癒合して骨性強直していることがレントゲン写真で確認できれば強直となる。

むち打ちや脱臼、脊髄損傷など、幅広い疑問にもお応えします。ご相談は埼玉の弁護士、むさしの森法律事務所にご連絡ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る