Q.脊柱の変形障害とは何ですか。また後遺障害等級はどうなっていますか。
脊柱の変形とは,本来の弯曲の程度と異なるものをいいます。
後遺障害等級は,
脊柱に著しい変形を残すもの(6級5号)
脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当)
脊柱に変形を残すもの(11級7号)
の3段階です。
この認定については,一定の脊柱の後弯・側弯の程度につての要件が必要です。
また,脊柱に変形を残すもの(11級7号)の場合には,逸失利益の争いとなりやすいと言えます。
------------------------------
なお詳細は続きをご覧ください。
続きを読む
1 脊柱の変形障害の後遺障害等級はどうなっていますか。 (クリックすると回答)
脊柱に著しい変形を残すもの(6級5号),
脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当),
脊柱に変形を残すもの(11級7号)の3段階です。
2 変形の認定は,どうするのですか。 (クリックすると回答)
脊柱の後弯又は側弯の程度により認定します。
頸椎・胸椎・腰椎とも,少し弯曲しています。
その弯曲の異常が脊柱の変形を示すものです。
変形とは,後弯が異常に増大・減少,あるいは,側方へ弯曲した側弯,それらの有無と程度により認定します。
3 後弯程度の判定方法はどうですか。 (クリックすると回答)
脊椎圧迫骨折,脱臼等によって前方(額側)の椎体の高さが減少した場合,
減少した椎体の前方の高さと同じ椎体の後方の高さを比較して判定します。
原則として頸椎と胸椎腰椎との区分をしているために,それぞれ別に判定されます。
しかし,後弯が頸椎から胸椎部にまたがって生じている場合には例外として前方椎体高が減少したすべての脊椎の前方椎体高の減少の程度によって判定されます。
4 側弯程度の判定方法はどうですか。 (クリックすると回答)
コブ法により判定されます。
つまり,X線写真により,脊柱が正面から見てカーブを描いている場合に,
そのカーブの頭側及び尾側においてそれぞれ水平面から最も傾いている脊椎の椎体上縁(椎骨の一番上の部分)の延長線と,
尾側で最も傾いている脊椎の椎体下縁(椎骨の一番下の部分)の延長線が交わる角度(コブ角)を測定して判定されます。
詳細は,次の記事をご覧下さい。(リンク)
脊柱変形障害におけるコブ法とは何ですか。どのような意味がありますか。---後遺障害賠償は,むさしの森法律事務所
5 脊柱に著しい変形を残すもの(6級5号)とは (クリックすると回答)
脊柱に著しい変形を残すもの(6級5号)とは
X線写真,CT画像又はMRI画像により,脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって,次のいずれかに該当するものです。
(1)脊椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し,後弯が生じているもの。
「前方椎体高が著しく減少し」とは,減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が,減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さ以上であるものを言います。
例えば3個の椎体の前方椎体高が減少したとして,
3個の椎体の後方椎体高の合計が12センチメートル,減少後の前方椎体高の合計が7センチメートルとしたならば,その差は5センチメートルです。
3個の椎体の後方椎体高の1個あたりの高さは12÷3=4センチメートルなので,
5センチメートル>4センチメートル
つまり
「椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差
」 > 「後方椎体高の1個あたりの高さ」となって,
「脊柱に著しい変形を残すもの」に該当します。
(2)脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し,後弯が生じると共に,コブ法による側弯度が50度以上となっているものを言います。
「前方椎体高が減少し」とは,減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計の差が,減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるものを言います。
例えば,2個の椎体の前方椎体高が減少して,2個の椎体の後方椎体高の合計が8センチメートル,減少後の前方椎体高の合計が5.5センチメートルとします。
その差は8-5.5=2.5センチメートルです。
また,2個の椎体の後方椎体高の1個当たりの高さは8÷2=4センチメートルなので,その50%は,2センチメートルです。
すると,2.5センチメートル>2センチメートル。
つまり,
「減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計の差」 >
「減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%」なので,
「脊柱に著しい変形を残すもの」に該当します。
6 脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当)とは(クリックすると回答)
脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当)とは,
X線写真,CT画像又はMRI画像により,脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって,次のいずれかに該当するものです。
(1)脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し,後弯が生じているもの
つまり,脊柱に著しい変形を残すもの(6級5号)(1)の場合で,コブ法による側弯度が50%以上となっていないものです。
(2)コブ法による側弯度が50度以上となっているもの
つまり,脊柱に著しい変形を残すもの(6級5号)(1)の場合で,脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し,後弯が生じていないものです。
①脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し,後弯が生じる
+
②コブ法による側弯度が50度以上となっているもの
=脊柱に著しい変形を残すもの(6級5号)(1)の場合であるのに対して
その片方の場合(①あるいは②のみ)には,脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当)に該当すると言うことです。
(3)環椎又は軸椎(いずれも頸椎の一部)の変形・固定による場合
→8 をご覧下さい。
7 脊柱に変形を残すもの(11級7号)とは(クリックすると回答)
脊柱に変形を残すもの(11級7号)とは,
次のいずれかに該当するものを言います。
(1)脊椎圧迫骨折等を残しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
(2)脊椎固定術が行われたもの(但し,移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除きます。)
(3)3個以上の脊椎について,椎弓切除等の椎弓形成術を受けたもの
8 脊椎(脊柱・脊髄)に手術が行われた場合の変形障害は後遺障害になりますか。(クリックすると回答)
椎弓切除術・脊椎固定術等の脊椎(脊柱・脊髄)に対する手術が,事故後に行われることがあります。
その場合には,脊柱の変形障害となる可能性があります。
後遺障害等級としては,
「脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当)」
あるいは「脊柱に変形を残すもの(11級7号)」
が考えられます。
①環椎と軸椎の固定術が行われた場合
(1)軸椎以下を可動させない,自然な状態で60度以上の回旋位となっているもの
(2)50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
(3)側屈位となっており,X線写真等により,矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面の平行線が交わる角度が30度以上の角度となっているもの
という,それぞれ環軸椎回旋位等が固定術後に発生していれば,
「脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当)」として後遺障害に該当します。
②脊椎固定術が行われたもの(但し,移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除きます。)
「脊柱に変形を残すもの(11級7号)」の後遺障害に該当します。
③3個以上の脊椎について,椎弓切除等の椎弓形成術を受けたもの
「脊柱に変形を残すもの(11級7号)」の後遺障害に該当します。
9 脊柱変形と労働能力喪失との関係はどうですか。 (クリックすると回答)
脊柱の変形として後遺障害認定されても労働能力には影響されないとして逸失利益に関して争いになることがあります。
とりわけ,脊柱に変形を残すもの(11級7号)については裁判所も労働能力喪失を認めることに消極的と言えます。
特に,被害者が若年者であり,脊柱の支持性と運動性の低下が軽微であるような事案においては,後遺障害の残存期間及びその程度を予測することが難しいことを考慮して,労働能力喪失期間を分けた上,期間ごとに労働能力喪失率を逓減することもあり得るとされています。
(以上 「交通事故損害関係訴訟」佐久間邦夫・八木一洋編 青林書院 p168)
この点は,以下の記事をご覧下さい。
後遺障害として認定されても労働能力喪失が争点となるものは何ですか。---後遺障害賠償は,むさしの森法律事務所(リンク)