Q.脊柱の運動障害が後遺障害と認定される要件は何ですか。認定される等級はどうなりますか。
骨折あるいは手術等で器質的変化により運動障害が生じている必要があります。
その上で,運動制限が一定のレベルにあることが必要です。
後遺障害等級は,頚部及び胸腰部が強直したものを「脊柱に著しい運動障害を残すもの」(6級5号)とし,頚部又は胸腰部のいずれかの可動域が参考可動域の2分の1以下に制限されたものを「脊柱に運動障害を残すもの」(8級2号)としております。
1 後遺障害と認定される要件は,何ですか。 (クリックすると回答)
以下のような器質的変化である運動障害の原因となる他覚的所見です。
①頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
すると,疼痛のために運動制限が生じている場合には脊柱の運動障害とはされないことになります。
その上で,運動制限が一定のレベルにあることが必要です。
脊髄断面図
2 運動制限の測定と評価は,どうですか。 (クリックすると回答)
(1)頚部とその他の部分である胸腰部の二つに区分して測定します。
(2)原則として自動運動によって可動域を測定します。
(3)上肢下肢のように健側と患側の比較が脊柱にはできないために,参考可動域角度により制限の程度を評価します。
(4)脊柱の運動には屈曲(前屈),伸展(後屈),回旋(左右),側屈(左右)があります。
日常生活にとり重要なものを主要運動,その他を参考運動としています。
この区分は頚部と胸腰部とでは違いがあります。
(5)屈曲と伸展,左右の回旋,左右の側屈の運動はそれぞれ同一面の運動であるために,例えば屈曲と伸展ならばその両方の運動の合計角度を出して,これを参考可動域角度と比較して制限の程度を評価します。
3 脊柱の運動障害による後遺障害等級はどうなりますか。 (クリックすると回答)
頚部及び胸腰部が強直したものを「脊柱に著しい運動障害を残すもの」(6級5号)とし,頚部又は胸腰部のいずれかの可動域が参考可動域の2分の1以下に制限されたものを「脊柱に運動障害を残すもの」(8級2号)です。
(1)「脊柱に著しい運動障害を残すもの」(6級5号)
器質的変化によって頚部及び胸腰部が強直したもの言います。
強直とは可動域の著しく制限された状態を言いますが,全く消失したものを完全強直,わずかながら残存するものを不完全強直と言います。
著しい運動障害に該当するとは,完全強直及びこれに近い状態を言います。
これに近い状態とは,主要運動のすべてが参考可動域角度の10%程度以下に制限されるものを言います。
(2)「脊柱に運動障害を残すもの」(8級2号)
頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたものです。
頚部について,主要運動として屈伸・伸展と回旋がありますが,いずれか一方でも参考可動域角度の2分の1以下に制限されていればこれに該当します。
なお,頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1をわずかに上回る場合(頚部については,参考運度の可動域角度(頚部は側屈,胸腰部は側屈あるいは回旋のいずれか)が2分の1以下に制限されていれば,これに該当します。
続きを読む
4 疼痛のために運動制限が生じている場合は,どうなりますか。 (クリックすると回答)
頚椎捻挫,腰椎捻挫等による疼痛によって運動障害が生じている場合には,脊柱の運動障害の等級認定対象とはなりません。
これらは,疼痛を局部に神経症状があるものとしての認定の対象となり得るだけです。
5 参考可動域角度とは,どのようなものですか。 (クリックすると回答)
Ⅰ 頚部
(1)屈曲(前屈)と伸展(後屈)
屈曲(前屈) 60度 主要運動
伸展(後屈) 50度 主要運動
→参考可動域角度(屈曲+伸展)=110度
(2)左回旋と右回旋
回旋(左回旋)60度 主要運動
回旋(右回旋)60度 主要運動
→参考可動域角度(左回旋+右回旋)=120度
(3)左側屈と右側屈
側屈(左側屈)50度 参考運動
側屈(右側屈)50度 参考運動
→参考可動域角度(左側屈+右側屈)=100度
Ⅱ 胸腰部
(1)屈曲(前屈)と伸展(後屈)
屈曲(前屈) 45度 主要運度
伸展(後屈) 30度 主要運度
→参考可動域角度(屈曲+伸展)=75度
(2)左回旋と右回旋
回旋(左回旋)40度 参考運動
回旋(右回旋)40度 参考運動
→参考可動域角度(左回旋+右回旋)=80度
(3)左側屈と右側屈
側屈(左側屈)50度 参考運動
側屈(右側屈)50度 参考運動
→参考可動域角度(左側屈+右側屈)=100度