Q.遷延性治癒骨折と偽関節の違いと関係はどうでしょうか。偽関節の後遺障害は,どうなりますか。

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A.

治療においての鑑別は容易ではなく,骨癒合が完成していないことに変わりはないためあえて区別しないことが多いとされています。

なお,後遺障害(後遺症)の対象は,偽関節です。

偽関節は後遺障害(後遺症)としての用語でもあり,偽関節だけで8級,加えて,著しい運動障害を残すと7級となります。

1 遷延性治癒骨折と偽関節の違いと関係はどうでしょうか。(クリックすると回答)


(1)遷延性治癒骨折とは何ですか
遷延性治癒骨折とは,骨癒合に必要な普通の日数を過ぎても,骨折部の仮骨形成が進まないことを言います。
適切な処置をすれば骨癒合する可能性がありますが偽関節となる危険性をはらんでいます。

(2)偽関節とはなにですか
遷延性治癒骨折に対して,偽関節とは,いつまでも骨癒合が起こらず,骨折部の治癒機転が停止しているもので,可動域が異常となったものをいいます。

(3)遷延性治癒骨折と偽関節両者の違いはありますか
この点は受傷後の期間とレントゲン写真像によって明らかにされます。

(4)癒合不全との違いはありますか
癒合不全とは,本来の解剖学的な癒合(骨片のくっつき)とは異なる癒合をしてしまったものを言います。
「偽関節を残すもの」も広い意味では癒合不全です。

後遺障害としては,癒合不全については「長管骨の変形」(12級8号)と,変形傷害とだけ評価されます。
しかし,癒合不全の生じた部位・箇所と,硬性補装具を用いる必要性の程度によって「偽関節」として機能障害と評価されるのです。

2 上肢の偽関節による後遺障害等級はどうなっていますか。(クリックすると回答)


後遺障害等級は,
「偽関節を残すもの」→8級8号「偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの」→7級9号
なお,
「長管骨に変形を残すもの」→12級8号
となっております。

①「偽関節を残すもの」(8級8号)とは,次のいずれかに該当するものです。

(1)上腕骨の骨幹端部又は骨幹部(以下「骨幹部等」と言います。)に癒合(ゆごう)不全を残すもの
(2)橈骨および尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの
(3)橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部等に癒合不全を残すもので,時々硬性補装具を必要とするもの

②「偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの」(7級9号)とは,次のいずれかに該当するものです。

次のいずれかに該当し,常に硬性補装具を必要とするものを言います。

(1)上腕骨の骨幹端部又は骨幹部(以下「骨幹部等」と言います。)に癒合(ゆごう)不全を残すもの
(2)橈骨および尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの

③「長管骨に変形を残すもの」(12級8号)には,次のようなものがあります。

(ア)次のいずれかに該当し,外部から想見できる(見て分かる)もの※
①上腕骨に変形を残すもの
②橈骨及び尺骨の両方に変形を残すもの(但し,いずれか一方のみの変形でも,その程度が著しいものはこれに該当)
※「外部から想見できる」とは,15度以上屈曲して不正癒合したものを言うとされています。

(イ)上腕骨,橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの
(ウ)橈骨及び尺骨の骨幹部に癒合不全を残すもので,硬性補装具を必要としないもの
(エ)上腕骨,橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
※「外部から想見できる」とは,15度以上屈曲して不正癒合したものを言うとされています。

☆「橈骨及び尺骨の骨幹部に癒合不全を残すもので,硬性補装具を必要としないもの」は,偽関節とはならず,変形傷害としてのみ扱われます。
同じく,橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの,あるいは,癒合不全を残すものも同様です。

④ことば橈骨=前腕を構成する二つの長管骨の内で親指側にあるものです。
尺骨=橈骨に対して小指側にあるものです。

3 下肢の偽関節等の変形障害による後遺障害等級はどうなっていますか。(クリックすると回答)


後遺障害等級は,
「偽関節を残すもの」→8級9号
「偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの」→7級10号
なお,
「長管骨に変形を残すもの」→12級8号
となっております。

①「偽関節を残すもの」(8級9号)とは,次のいずれかに該当するものです。

(1)大腿骨の骨幹端部又は骨幹部(以下「骨幹部等」と言います。)に癒合不全を残すもので常に硬性補装具を必要としないもの
(2)脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもので常に硬性補装具を必要としないもの
(3)脛骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので常に硬性補装具を必要としないもの

②「偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの」(7級10号)とは,次のいずれかに該当するものです。

次のいずれかに該当し,常に硬性補装具を必要とするものを言います。
(1)大腿骨の骨幹端部又は骨幹部(以下「骨幹部等」と言います。)に癒合不全を残すもの
(2)脛骨および腓骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの
(3)脛骨の骨幹部等に癒合不全を残すもの

③「長管骨に変形を残すもの」(12級8号)には,次のようなものがあります。

(ア)次のいずれかに該当し,外部から想見できる(見て分かる)もの※
①大腿骨に変形を残すもの
②脛骨に変形を残すもの(但し,腓骨のみの変形でも,その程度が著しいものはこれに該当)
※「外部から想見できる」とは,15度以上屈曲して不正癒合したものを言うとされています。
(イ)大腿骨又は脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの
(ウ)大腿骨又は脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの

☆腓骨のみの変形では,「その程度が著しいもの」が,「長管骨に変形を残すもの」に該当します。
また,大腿骨又は脛骨の骨端部に癒合不全,あるいは,ほとんどを欠損したものでは「偽関節」での該当はせず,変形障害のみと言うことになります。

④ことば
脛骨=下腿部分を構成する2本の骨で内側(足の親指側)にあるもの
腓骨=脛骨に対して外側(足の小指側)にあるもの

4 腓骨だけの癒合不全の後遺障害等級はどうなりますか。(クリックすると回答)


下腿部の脛骨の隣にある腓骨が骨癒合が起こらず異常な可動性が残る場合です。
後遺障害等級は,脛骨に癒合不全がなく腓骨のみの場合には癒合不全が「著しい程度」であれば長管骨の変形として12級8号となります。
しかし,その程度までいかなければ,場合には非該当と考えられます。

下腿部を支えるものとしては脛骨が腓骨に比べ格段に大きく頑丈です。
そこで,12級8号に該当するとしても現実に労働に影響を与えないとして逸失利益の発生が否定される場合があり得ます。

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