Q.大腿骨頚部骨折の後遺障害(後遺症)は,どうなりますか。
人工骨頭置換術(リンク)あるいは人工関節術を行った場合に股関節可動域が2分の1以下の制限を受けるかどうかで後遺障害8級あるいは10級となる可能性があります。
内固定(下記4 治療方法参照)をした場合には,股関節の機能障害として10級もしくは12級となる可能性があります。
さらには,骨癒合により短縮して左右差が生じた場合には下肢短縮による後遺障害も考えられます
股関節は,骨盤を形成する寛骨にある寛骨臼に大腿骨骨頭が入っている状態にあります。その大腿骨骨頭のすぐ下の大腿骨のくびれた部分が大腿骨頚部です。
人工骨頭置換術(リンク)あるいは人工関節術を行った場合に股関節可動域が健側の2分の1以下となる制限を受ければ後遺障害8級7号,それを超える場合には10級11号となる可能性があります。
健側とは,今回の事故で受傷しなかった側で,それに対して受傷した側を患側と言います。
既に別の原因で健側に可動域制限がある場合には参考可動域角度によります。
股関節の主要運動は,屈曲・伸展/外転・内転の2つです。
そのいずれか(屈曲+伸展あるいは外転+内転)の合計値に可動域制限があるかで判断されます。
内固定(下記 4 治療方法参照)がされて,股関節の可動域制限により10級11号あるいは12級7号となります。
すわち,
可動域2分の1以下=1関節の著しい機能障害
→10級
可動域4分の3以下=1関節の機能障害
→12級
骨頚部が短縮して骨癒合してしまった場合には,短縮による足の左右差に応じての次の通りに下肢短縮による後遺障害(リンク)となる可能性があります。
短縮が5㎝以上→8級5号
短縮が3㎝以上→10級8号
短縮が1㎝以上→13級8号
それは次のことからです。
①骨膜がないために,骨膜性仮骨がそもそもできない。
②血管分布の関係で,骨癒合が悪く,骨頭部に骨頚部の骨折により決行が遮断されてしまうために骨頭壊死になりやすい。
③骨折面に対する圧迫力が働きにくく,却って横にずれる力が働きやすいために癒合がしにくい。
④さらに高齢者の場合には骨萎縮があるために骨癒合がいっそう難しい。
治りにくい骨折であるため,保存的治療で自然に骨癒合をすることが期待できにくいと言われています。
特に,偽関節を生じた場合や,長期入院となるおそれのある高齢者では寝たきりとなるおそれがあることからも,人工骨頭置換術あるいは人工関節術を行います。
あるいは,DHS(dynamic hip screw)CHS(compression hip screw)中空型スクリュー(canulated screw)といったもので,内固定をすることもあります。