Q.嗅覚障害の後遺障害等級はどうなっていますか。
完全な嗅覚脱失は12級相当,嗅覚の減退は14級相当の後遺障害(リンク)となります。
1 障害等級表の定め
労災保険障害等級表では,鼻の欠損として規定しているのみで「鼻の欠損」(外観上から見ての)がない,機能障害のみの障害については定めておりません。
この点は,
(ア)嗅覚脱失又は鼻呼吸困難については,第12級の12(労災基準)を準用
(イ)嗅覚の減退については,第14級の9(労災基準)を準用
とだけあるので,それぞれ自賠責等級では12級相当,14級相当となります。
2 嗅覚脱失および嗅覚の減退の測定
T&Tオルファメータによる基準嗅力検査の認知域値の平均嗅力損失値により,次のように区分するとされています。
5.6以上 嗅覚脱失
2.6以上5.5以下 嗅覚減退
なお,嗅覚脱失については,アリナミン静脈注射(アリナミンPであり「アリナミンF」を除く。)による静脈性嗅覚検査による検査所見のみによって確認しても良いとされています。→リンク
3 嗅覚測定方法
T&Tオルファメータによるものは,基準嗅力検査と呼ばれ,基準臭5種類についてにおいをかいで「何かにおう」と「何のにおい」(これを認知閾値と言います。)を判断できるかを調べるものです。
認知閾値の平均により嗅覚障害の程度を判断します。正常者は1.0以下です。認知閾値の平均が5.6以上となると嗅覚脱失,2.6以上5.5以下となると嗅覚減退となります。
静脈性嗅覚検査によるものは,アリナミン静脈注射を20秒間行って呼気性の嗅覚を検査する方法です。注射開始から嗅感が起きるまでを潜伏時間,嗅感が起きてから消えるまでを持続時間と言います。正常値は,潜伏時間は6~10秒間,持続時間は45秒~90秒です。嗅覚障害があると潜伏時間が延長し,持続時間が減退します。
医学的には基準嗅力検査で嗅覚脱失と判断されても,静脈性嗅覚検査で陽性なら治療による改善の余地があるとされています。
従って,静脈性嗅覚検査で陰性ならば治療による改善の可能性がなく嗅覚脱失は確認されたものとなるため,労災の障害等級基準では嗅覚脱失については,アリナミン静脈注射(「アリナミンF」を除く。)による静脈性嗅覚検査による検査所見のみによって確認しても良いとされているのです。
4 交通事故による嗅覚障害
においは,嗅細胞,嗅神経,嗅球,およびそこから回路を経て脳中枢に至ります。においの識別は,嗅細胞,嗅球のレベルで行われていると言われています。嗅球から中枢に至るまでの頭部外傷により嗅覚障害が発生することがあります。
被害者の方は,耳鼻咽喉科だけではなく,また脳神経外科だけではなく,いずれも受診をして嗅覚障害については正しく理解をすべきです。なお,T&Tオルファメータの設備が通院している耳鼻咽喉科に,もし,設置されていないようであれば,設備のある大学病院等を紹介してもらいましょう。