Q.(むち打ち 後遺症) むち打ち(頚椎捻挫)で12級13号(頑固な神経根症状)が認められるためには何が必要ですか。
むち打ちで12級13号(頑固な神経根症状)が認められるものの,多くは神経根症であることが証明できている場合です。
そのためには,神経症状について,きちんとテストをしてもらってください。
その上で後遺障害診断書に添付して提出すべきです。
そうでなければ12級の土俵にも乗りません。
1 12級13号(頑固な神経根症状)とは何ですか。 (クリックすると回答)
12級13号(頑固な神経根症状)とは「医学的な証明」ができるものを言います。
「医学的な証明」とは他覚的な神経症状が残存していて,それが画像により神経圧迫されている神経の箇所と一致することです。
神経根症というのは,むち打ちで末梢神経根が傷つき障害が生じることです。
そして,それが残ってしまう場合に後遺障害として12級13号(局部に頑固な神経症状)に該当するのです。
頚椎からは第1から8までの神経が出ています。例えば第6頚神経(根)という言い方をします。
むち打ちで傷つきやすい神経根は,第6から8までの頚椎神経根ですそして,頚椎の一番下の第7頚椎と背中のてっぺんの第1胸椎の間から出ている第8頚椎神経根(C8)が最も多いとされています。
2 なぜ,12級ではなく14級止まりのものがあるのですか。 (クリックすると回答)
まず,残存した症状が14級にふさわしいものであればそれは仕方のないことです。
しかし,神経症状及び画像による所見がきちんと提出されていて,それに対する弁護士の補足説明がなされれば12級となる可能性のあるものが,舌足らずの状況によって無残にも低い等級止まりになっていることも多々あると言えます。
3 12級認定のためには何が必要でしょうか。 (クリックすると回答)
要するに交通事故によって障害を受けた神経根があって,それがどの神経根であるかを明らかにすればいいのです。なお,神経根とは脊髄から枝分かれした末梢神経のことです。
また,これを簡単に障害神経根と呼んでおきます。
①障害神経根に他覚的な神経症状が存在していることを明らかにする。
②画像所見により障害神経根となっている可能性があることを明らかにする。
③障害神経根が頚椎から出ているどの神経根であるかが,①と②とで一致する。
この3段論法を踏まえればいいのです。
4 後遺障害診断書の書き方で違うのでしょうか。 (クリックすると回答)
後遺障害診断書には,「疼痛」とだけ書かれて,部位も書かれていないというものではないですか。
自発痛・放散痛であるなら,そうだと,そして,部位についてはきちんと書いてもらいましょう。
そして,他覚的な神経症状の存在と,それに関して神経根症状誘発テスト(スパーリングテスト・ジャクソンテスト)による症状の再現性がされてその結果が書かれていますか。
画像所見との関係についての記載はありますか。「疼痛」とだけ書かれて,部位も書かれていない後遺障害診断書では,判断を待つまでもなく非該当への道をまっしぐらです。
他覚的な神経症状の存在と,それに関する神経根症状誘発テストの結果については,後遺障害診断書に記載することでも良いのですが,できるだけ別紙に書いてもらいましょう。
その項目としては次のものになります。
(1)スパーリングテスト
(2)ジャクソンテスト
(3)握力
(4)徒手筋力テスト
(5)筋萎縮検査
(6)知覚検査
(7)腱反射
(8)手指巧緻運動
(9)膀胱・直腸障害
5 各神経根の障害による症状はどのようなものですか。 (クリックすると回答)
(1)第6神経根の障害
C5/6から出ている(第5頚椎と第6頚椎の間から出ている)ものです。
特徴は,痛みと知覚障害と,上腕二頭筋の反射が低下して,筋力が低下します。
痛みは,首の下の背骨から肩甲骨の間の放散痛(痛みが周辺に広がっていくような痛み)と,肩から上腕そして,肘にかけての自発痛(安静にしていても痛い)です。
知覚障害としては肘の下あたりから親指,人差し指にかけて知覚が鈍麻したり過敏になったりします。
(2)第7神経根の障害
C6/7から出ている(第6頚椎と第7頚椎の間から出ている)のが,これです。
特徴は,痛みと知覚障害と,上腕三頭筋反射の低下,さらに肘の伸展力・指の伸展力・手関節の屈曲力の低下です。
上腕三頭筋は上腕二頭筋の反対側,つまり腕を伸ばした時に外側に来る筋肉です。
放散痛は背中の上の部分から上腕の方向へ広がるようなものです。
自発痛は第6神経根の障害と同様で肩から上腕そして,肘にかけての自発痛(安静にしていても痛い)です。
知覚障害としては肘の下あたりから人差し指,中指にかけて知覚が鈍麻したり過敏になったりします。
(3) 第8神経根の障害
C7/T1から出ている(第7頚椎と第1胸椎の間から出ている)のが,これです。
特徴は,痛みと知覚障害ですが,さらに指の屈曲力の低下があります。
放散痛は,首筋から肩胛骨の上あたりに広がるようにして生じ,特に肩胛骨の上あたりに痛みがあります。
また,上腕の脇の下から尺側(小指側)から肘の下にかけて自発痛があります。
知覚障害としては,肘の下から小指,薬指にかけて地学が鈍麻したり過敏になったりします。