Q.難聴が後遺障害(後遺症)として認定されるためにはどうしたらよいですか。
難聴は,聴力障害として,後遺障害としては,両耳の場合には程度に応じて4級,6級,7級,9級,10級,11級の,一耳の場合には程度に応じて9級,10級,11級の後遺障害に該当する可能性があります。
難聴は,単に聞きづらいという自覚症状だけではだめで検査方法があり,その結果が出なければなりません。
1 難聴とは
外耳より入った音刺激が大脳側頭葉聴野に到達する経路の内,どの部位に病変があっても難聴という症状として出現します。
難聴とは文字通り,入ってくる音が聞き取りにくいことを意味していますが,聴力レベルが一定以下になった場合が後遺障害の対象となる「難聴」です。
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耳の構造
耳は,外耳・中耳・内耳の3つの部分に分けることができます。
3つの部屋に分かれていると言えます。外界の音は外耳より進入し,中耳にある鼓膜を振動させます。鼓膜の振動は,中耳から内耳の蝸牛に伝わります。
蝸牛はリンパ液により満たされており,鼓膜の振動は,リンパ液により液体の振動に変換されます。
そしてその振動を感覚細胞が電気信号に変換されて蝸牛神経に伝わり,そこから電気信号は大脳へと伝わり,大脳側頭葉聴野(大脳皮質の中で聴覚を司る部位)で音を認知・識別します。
3 難聴の分類
①伝音性難聴 conductive
deafness
外耳,中耳の障害による難聴で空気振動が十分に伝達できない状態になっていることによる難聴です。小さいな音が聞こえにくいだけで,言葉の明瞭さには余り影響は与えません。
②感音性難聴 perceptive
deafness
内耳,聴神経,脳の障害による難聴であり,音が聞こえにくいだけでなく,音が歪んだり響いたり,言葉がはっきりと聞こえない状態です。
これは,原因等により内耳性(迷路)難聴,後迷路性難聴に分類され,後迷路性難聴は,蝸牛神経から脳の障害によるものであり,その原因箇所により末梢神経性難聴・脳幹性難聴・皮質性難聴に分類されます。
頭部外傷の場合で難聴を疑うときには,耳鼻科よりもむしろ脳神経外科医と相談されるなどして,できれば大学病院での検査をすべきでしょう。
③混合性難聴 mixed
deafness
伝音性難聴と感音性難聴の両方の原因を持つ難聴を言います。
純音聴力検査では,骨導聴力,気導聴力ともに低下しますが,気導聴力がより低下します。
4 聴覚の検査方法
ア オージオメーターによる純音聴力検査 Pure Tone
Audiometry
オージオメーターは,各種の純音を電気的に発振し,それぞれの音を強めたり弱めたりすることができます。その聞こえ方を分析して検査するものです。
これには,a)骨導聴力検査 b)気導聴力検査があります。
なお,純音聴力検査は,3回の検査の平均をとることになっていますので,必ず3回検査を受けないといけません。また,聞こえる音がどの位のdB(デシベル)であるかにより示されます。
a)骨導聴力検査は,振動板を耳後部(乳突部)あるいは額に当て,頭蓋骨を通って直接内耳に達する経路で聞こえを測定する方法です。これにより外耳から脳中枢までの聴覚系における難聴の程度を調べるものです。
b)気導聴力検査は,レシーバーから出た音が,中耳を通って内耳に入る経路の空気中を伝わってきた音がどの程度聞こえるかの検査です。
純音聴力検査では,伝音性難聴は,骨導聴力が正常で,気導聴力が低下します。
純音聴力検査では,感音性難聴は,骨導聴力,気導聴力ともに低下します。
純音聴力検査では,混合性難聴は,骨導聴力,気導聴力ともに低下しますが,気導聴力がより低下します。
イ 語音聴力検査 Speech
Audiometry
純音聴力検査は,聴覚機能の一面のみを示すにすぎません。言葉や音楽を聞くためには,個々の周波数を分析して,強さを分析するだけではなく,時間的経過と共にその成分の総合的変化を受け取っているのです。そこで,聴覚の総合的能力の検査のために語音の検査があります。
a)語音明瞭度検査は,単音(例えば,ガデワコクニテトカナ)をランダムに聞かせて書き取らせる正答率による検査方法です。後迷路性難聴では聴力損失値にかかわらず弁別損失が大きくなるとされています。
b)歪語音明瞭度検査は,語音を構成する各種成分音の一部を減らして,少しゆがみを与えた語音を使用して明瞭度を測定します。後迷路性難聴では歪語音明瞭度が著しく低下するとされています。
なお,これらの検査によって,明瞭度がどの位まであるかという%で示されます。
難聴は,事故との因果関係,特に事故による頭部打撲があったかどうかをめぐる問題が生じることがあります。事故後に聞こえが悪くなったから認められるだろうと思っているととんでもないことになる心配があります。もしかしてと思えば早めのご相談をして下さい。