Q.男性の醜状の後遺障害等級はどうなっていますか。
外貌については,障害の程度に応じて7,9,12級及び上下肢の露出面の醜状は,14級となります。 1 醜状障害の分類は,どうなりますか。 (クリックすると回答)
2 男性の醜状障害の等級は,どうなっていますか。 (クリックすると回答)
3 外貌における「著しい醜状を残すもの」「(単なる)醜状を残すもの」とは,どういうことですか。 (クリックすると回答)
4 その他としてどのような問題がありますか。 (クリックすると回答)
醜状障害は,
(1)外貌の醜状
(2)上肢の露出面の醜状
(3)下肢の露出面の醜状
(4)その他の醜状(日常露出しない部位の醜状)の4つに分類され,それがかつては男女別で分かれていました。
つまり,女性の方が男性より等級が高くなっていました。
それは,女性の方が醜状によって受ける精神的苦痛が男性よりも大きいのだという社会通念に基づいていたと言われています。
しかし,2011年(平成23年)5月2日施行の改正自賠法施行令で外貌醜状について改正され男女差がなくなりました。
また,外貌醜状は,著しい醜状,(単なる)醜状の2種類であったのが,間に「相当程度の醜状」が入り,3種類となりました。
改正自賠法施行令は,平成22年6月10日以降に発生した事故に適用されます 。
醜状障害は,他の障害が労働能力喪失からの観点からダイレクトに定められていることに対して,他人から見られる自分,それを意識する自分という極めてデリケートな観点からの問題をはらんでいます。
なお,他人から嫌悪感をいだかれること自体で労働能力が減退するのであるから,他の障害と違いはないという説明もあり得ます。
この醜状障害の分類と他の障害と比べての特殊性から,第1に労働能力喪失についてどのように考えるのか,第2に男性の醜状障害が女性と比べて低いのは憲法違反の逆差別ではないか,という議論が生じていました。
後者については,今回の改正で是正されたことになります。(上肢下肢の露出面に関しては従前からも男女差はありませんでした。)
しかし,第1の労働能力喪失についての問題は,男女とも依然として残ることにはなります。
【平成22年6月10日以前に発生した事故】
(1)外貌の醜状
男性の外貌に著しい醜状を残すもの→12級14号
男性の外貌に醜状を残すもの →14級10号
(2)上肢及び下肢の露出面の醜状(女性と同じです。)
上肢の露出面に手のひらの大きさの見にくい跡を残すもの→14級4号
下肢の露出面に手のひらの大きさの見にくい跡を残すもの→14級5号
【平成22年6月10日以降に発生した事故】
外貌に著しい醜状を残すもの →7級12号
外貌に相当程度の醜状を残すもの →9級16号
外貌に醜状を残すもの →12級14号
第9級については,女性の外貌に著しい醜状を残すものとして今までは,7級12号としていた人目につく程度の長さ5センチメートル以上の線状痕について「医療技術の進展により傷跡の程度を相当程度軽減できる障害を新設する「第9級」として評価する」と説明されています。
(1)外貌
頭部,顔面部,頸部のごとく,上肢及び下肢以外の日常露出する部分を言います。
(2)外貌における「著しい醜状を残すもの」(改正後7級12号,改正前12級14号)
原則として次のいずれかに該当する場合で,人目につく程度以上のものを言います。
a. 頭部にあっては,手のひら大(指の部分は含みません。以下も同じです。)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
b. 顔面部にあっては,鶏卵大面以上の瘢痕,長さ5センチメートル以上の線状痕又は10円銅貨以上の組織陥凹
注:長さ5センチメートル以上の線状痕については,今回の改正で新設された9級16号相当程度の醜状となります。
c. 頸部にあっては手のひら大以上の瘢痕
(3)外貌における「(単なる)醜状を残すもの」(改正後12級14号,改正前14級10号)
原則として次のいずれかに該当する場合で,人目につく程度以上のものを言います。
a. 頭部にあっては,鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面大以上の欠損
b. 顔面部にあっては,10円銅貨以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
c. 頸部にあっては鶏卵大面以上の瘢痕
(4)障害補償の対象となる外貌の醜状
人目につく以上のものでなければなりませんから,瘢痕,線状根及び組織陥凹であって,眉毛,頭髪等にかくれる部分については,醜状として取り扱いません。
(5)上肢,下肢の露出面
上肢の露出面は,上腕(肩関節以下)から指先まで
下肢の露出面は,大腿(股関節以下)から足の背まで
(1)耳介の欠損傷害との関係
耳介軟骨部の2分の1以上を欠損した場合は,「著しい醜状」とし,その一部を欠損した場合は,単なる「醜状」となります。
(2)鼻の欠損傷害との関係
鼻軟骨部の2分の1以上を欠損した場合は,「著しい醜状」とし,その一部を欠損した場合は,単なる「醜状」となります。
(3)火傷の黒褐色変色など
火傷治癒後の黒褐色変色又は色素脱失による白斑等で合って,永久的に残ると認められ,括人目につく程度以上のものは,単なる「醜状」と取り扱いますが,その範囲は,「3 用語の説明(3)」と同じでなければなりません。
(4)上肢下肢の手のひら大を超える瘢痕
上肢あるいは下肢の手のひら大を超える瘢痕,つまり手のひらの大きさの3倍以上を残して特に著しい醜状と判断される場合には,12級相当となります。
(5)日常露出しない部位の醜状
① 日常露出しない部位
胸部及び腹部,背部及び臀部を言い,上肢・下肢は含まれません。
② 日常露出しない部位の醜状障害
それらの面積の4分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すもの→14級相当
それらの面積の2分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すもの→12級相当
③ 問題点ないし問題提起
日常露出しない部位であることからの等級ではありますが,労働能力喪失とは無関係とはいえ,若年者が水着姿になることに躊躇することなどの日常生活への影響を考えた場合に,あるいは,モデル等の職種も考慮すると,この等級自体が低いのではないでしょうか。
男性の場合でも,最近は社内旅行等の親睦の機会は減少しているとは言え,周囲から好奇あるいは同情の目で見られると言うことが考えられ,円満な関係を作ることへの障害となることは十分に考えられるからです。