Q.低髄液圧症候群とは何ですか。
頭痛を主な症状とする国際頭痛学会の概念として(本来の)低髄液圧症候群です。
それに対して,概念を拡張して認められるものがあるかどうかと言うのが議論となっています。
1 低髄液圧症候群をめぐる議論とは何ですか。 (クリックすると回答)
頭痛を主な症状とする国際頭痛学会の概念として,それに基づく診断基準により広く受け入れられているものが(本来の)低髄液圧症候群です。
これに対して,一部の医師による「脳脊髄液減少症研究会」が(本来の)低髄液圧症候群の概念を拡張して,独自の診断基準で低髄液圧症候群として治療(主に,硬膜外腔に血液を注入して行うブラッドパッチ)をしています。
とりわけ,むち打ち症によっても低髄液圧症候群が発症することを広く認める傾向があり,大きな議論となっています。
2 (本来の)低髄液圧症候群の本質とは何ですか。 (クリックすると回答)
低髄液圧症候群の本質は,脊髄腔から髄液が漏出することによる脳脊髄腔内の圧力の低下であり,この髄液の漏出によって生じる一連の病態を含むものです。
脳脊髄腔というのは,脳から脊髄までつながる閉鎖空間です。
脳脊髄腔には,脳と脊髄,そしてそれらを取り囲む脳脊髄液(これがいわゆる髄液です。)があり,これらのすべてを硬膜が取り囲んでいます。
そして硬膜の一部に穴が開き,脳脊髄腔のどこかで髄液が漏出すると,頭蓋内の圧力が低下して,脳組織が下がってきて頭痛等の症状が生じるのです。
3 低髄液圧症候群となる理由は,どのようなものですか。 (クリックすると回答)
閉鎖空間の脳脊髄腔内から髄液が漏出すると脊髄液圧が低下します。
正常な脊髄液圧は,100㎜水柱から150㎜水柱とされていますが,典型的な低髄液圧症候群は,60㎜水柱まで下がると言われています。
しかし,髄液漏出が確認されているにもかかわらず,髄液低下が見られない症例があります。
その説明としては,頭蓋内が硬い骨に囲まれていて容積は一定であり,何かが減少すると容積の一定を保とうとして減少したものと同じ体積の別のものが増加するというのです(モンロー・ケリーの法則)。
つまり,髄液が減少した場合にモンロー・ケリーの法則が働いて頭蓋内腔の末梢血管の拡張等で減少分が補われるために,低髄液圧にならないと説明されています。
そこで,低髄液圧症候群ではなく髄液減少という名称にするように提唱する意見もあります。