Q.子ども(男子)が死亡した場合の逸失利益は,どのように計算しますか。
子ども(男子)さんの死亡については基礎収入及び生活費控除率をどうするかが問題となります。
判決の傾向とすれば
「全男性労働者平均賃金として生活費控除率は50%」のやり方
が一般的と言えます。
1 一般的な逸失利益の計算は,どうするのですか。 (クリックすると回答)
逸失利益とは,死亡していなければ得られたであろう利益のことです。
計算式としては,次のようになります。
基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
生活費控除率を差し引くのは,生存したであろう生活費が死亡したことによって不要となったための損益相殺と言うことで説明されています。
就労可能年数に対応するライプニッツ係数とは,現在年齢から67歳までの年数に対応するライプニッツ係数ということです。
ライプニッツ係数とは,将来にもらえる収入を現在もらうことに対して現在価値に引き直す方法です。
なお,この計算式は,18歳を超える有職者または就労可能者を前提にしており,子どものような18歳未満の場合は,そのままでは当てはめることはできませんので,次の2のやり方になります。
2 18歳未満の逸失利益の計算は,どういうものですか。 (クリックすると回答)
基礎収入額×(1-生活費控除率)×
(①3歳から67歳までのライプニッツ係数-②3歳から18歳までのライプニッツ係数)
例えば3歳では
①67年-3年=64年であるので64年に対応するライプニッツ係数=19.1191
②18年-3年=15年であるので15年に対応するライプニッツ係数=10.3797
すると,19.1191-10.3797=8.7394
これが3歳に適用されるライプニッツ係数となります。
例えば12歳では
①67年-12年=55年であるので55年に対応するライプニッツ係数=18.6335
②18年-12年=6年であるので6年に対応するライプニッツ係数= 5.0757
すると,18.6335-5.0757=13.5578
これが12歳に適用されるライプニッツ係数となります。
3 男の子の死亡逸失利益で問題となることは,何ですか。 (クリックすると回答)
基礎収入について平等の観点から男女同一にすると,生活費控除率の違いから男女の逆転が生じてしまいます。
その調整が問題となります。
そこで,考え方としては3通りあると思います。
(1)男の子も同じ男女計の全労働者平均賃金として生活費控除率は50%とします。
この場合に,男女の逆転が生じますが,それはやむを得ないものとします。
(2)男の子も同じ男女計の全労働者平均賃金として生活費控除率も同じ45%とします。
(3)男の子は,男女別の全男性労働者平均賃金として生活費控除率は50%とします。
前項で言えば(3)「男の子は,男女別の全男性労働者平均賃金として生活費控除率は50%」のやり方をとることが一般的と言えます。