Q.事故当時に,無職であっても逸失利益は認められますか。

[アルバイト,全年齢平均,基礎収入,女子,年齢別平均,無職,無職者,若年者,賃金センサス,逸失利益,非正規雇用,高齢者]

A.

無職者であっても,年齢やそれまでの職歴,家族歴等の総合判断により逸失利益が認められる可能性は高いです。
その場合に基礎収入として全年齢平均賃金によるか年齢別によるかは,事案により異なってきます。
----------------------------

なお詳細は,続きをご覧ください。

代表弁護士岡田正樹による出版物です

ごめんじゃすまない! 自転車の事故

むさしの森 法律事務所 岡田 正樹 (著)

本書の特長は事故を起こした加害者、事故に巻き込まれた被害者の真実をもとに、それぞれの苦しみや悲しみの物語、危険運転に対する違反切符と罰則、過失の割合、賠償・慰謝料の実例、自転車用の保険、和解に導く弁護士の役目など、あらゆる面から自転車事故を解説しています。 大切なお子さんを加害者に、被害者にもさせたくない。子を持つお父さん、お母さんには必携の書です。

Amazon詳細ページへ

続きを読む

1 無職者は,どのように分類されますか。(クリックすると回答)

誰でも,好んで無職になるわけではありません。
それなりの理由があるはずです。
しかし,何かで分類をしないと話がややこしくなるので,わかりやすい年齢層で分類すると,
a)若年者あるいは比較的若年者
b)中高年者
c)退職者だが高齢者前
d)高齢者
となります。

なお,平成16年改正高齢者雇用安定法の施行(平成18年4月1日から)に伴って,定年延長等ともからんでc)については新たな論点が出てきております。

2 逸失利益がそもそも認められるますか。(クリックすると回答)


無職者であっても,被害者が将来働いて収入を得る蓋然性が認められる場合には当然に算定されます。
そして,休業損害よりも,この点は将来的な予測になるために若干は緩やかなものと言えます。

その「蓋然性」については,被害者の「年齢,健康状態,経歴,前職を離職した経緯,無職の期間の長短,無職の理由,資格や特技,資産,家計の収支内容,家族構成や他の家族構成員の収入の有無等の諸事情を総合的に考慮されます。


このことは, 判決例(東京地裁 平成13年11月30日判決<出典> 自動車保険ジャーナル・第1441号)でも述べているのです。

つまり,本人が働くつもりがあったと言うだけではなく,事故当時に無職者であったとしても「将来稼働の機会を得る蓋然性が認められる場合」には,逸失利益が認められるとしています。
そして,「無職者である被害者が将来稼働する機会を得る蓋然性があるか否か」については,
被害者の主観的な就労の意思のみならず,
「被害者の年齢,健康状態,経歴,前職を離職した経緯,無職の期間の長短,無職の理由,資格や特技,資産,家計の収支内容,家族構成や他の家族構成員の収入の有無」等の諸事情を総合的に考慮して認定していくことになる。

としています。

3 若年者及び比較的若年者の場合は,どうですか。(クリックすると回答)

現代の社会では派遣切りとか,就職難とか,若者にとり受難の時代です。
損害賠償において,裁判所はどのようなスタンスをとっているのでしょうか。またとるべきでしょうか。
抽象的には,無職に至るまでの経緯とか,それまでの職歴・学歴を考慮すると言うことですが,微妙な裁判官の価値判断が反映されているようにも思われます。
考えすぎでしょうか。

さて,若年者であれば,過去に職歴がなくとも,将来にわたる可能性から見て稼働の可能性があるとして年齢別の平均賃金では認定されています。
また,32歳というと比較的若年者を若干超える年齢ですが,その場合には,過去の職歴から見て事故当時は,たまたま無職であったけれども就労できた可能性が高いと認められる場合には,学歴に応じた平均賃金で算定されると言えます。(③横浜地裁 平成18年2月13日判決)
若年者及び比較的若年者の場合には将来の可能性という意味での年齢が大きくものを言って逸失利益を認めることに対する比較的ハードルは低いと言えるかもしれません。

しかし,若年及び比較的若年者で非正規雇用の場合に比べると無職者であることは,平均賃金としても全年齢平均賃金の適用に対しては,裁判所は消極的と言えます。

①も②もほぼ同年齢の未成年者死亡事案でしたが,いずれも男女別で年齢別平均賃金としており,全年齢平均賃金は適用しておりません。
なお,②は年齢別平均賃金からさらに減らして,その9割を基礎収入とするとされました。

①名古屋地裁 平成13年2月23日判決
平成9年(ワ)第4458号 損害賠償請求事件
<出典>自動車保険ジャーナル・第1402号
19歳無職男子の死亡事案で,将来にわたって稼働の可能性がなかったとまでは言えないと,男子労働者計年齢別(18歳~19歳)平均賃金を基礎に逸失利益を認定しました。

②名古屋地裁 平成11年3月26日判決
平成10年(ワ)第1078号
<出典>自動車保険ジャーナル 1309号
高校中退し,事故時無職であった18歳女子の逸失利益につき,一生涯無職であるとするのも相当とは言えないとして学歴計18~19歳女性労働者年間平均賃金センサスの9割で認定しました。

③横浜地裁 平成18年2月13日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1671号(平成19年1月25日掲載)
大学中退後勤務先を退職し事故当時は無職の32歳男子の逸失利益につき,男性労働者高専・短大卒全年齢平均平均を基礎収入と認定しました。

4 中高年者の場合は,どうですか。(クリックすると回答)


裁判所は,事故時点で家庭生活を営んでいるか,あるいはその年齢に至るまで,それなりの生活を営んでいたと判断できる場合には,逸失利益が肯定していると考えられます。

特に男性であっても損害保険会社(共済)との交渉段階では逸失利益が否定されることが多いと思われる論点ですが,これら判決の存在は重要です。

①大阪地裁 平成14年3月5日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1448号
交民集35巻2号348頁
夫の死別後は,息子と同居し遺族年金で生活する53歳女子の逸失利益について,全年齢女子労働者学歴計の平均賃金を基礎収入としました。
この判決では,
本件事故当時独身でアルバイトをしていた息子と同居し専業的に家事に従事していたこと等から全年齢女子労働者学歴計の平均賃金を基礎収入としました。

②広島地裁 平成12年8月2日判決(確定)
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1396号
友人とパソコン開発業を営み,近く事務所を設置する計画であった40歳男子の逸失利益につき,前年,前々年と所得金額はないが,妻子を扶養していたことから全年齢学歴計男子労働者平均賃金を基礎収入としました。

③福岡地裁飯塚支部 昭和63年8月30日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第789号
53歳男子の逸失利益算定につき,一見して浮浪者であったとみる余地もないではないが,以前鳶職をしていたこともあり,結婚していたこともあり,肉体的精神的欠陥があったと認める証拠がないことから,無職であったとはいえ,学歴計年齢別男子平均賃金を基礎収入としました。

5 高齢者あるいは退職者の場合は,どうですか。(クリックすると回答)

むち打ちや脱臼、脊髄損傷など、幅広い疑問にもお応えします。ご相談は埼玉の弁護士、むさしの森法律事務所にご連絡ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る