Q.交通事故による脳浮腫はどのようにして起こるのですか。そして脳浮腫,頭蓋内亢進,脳ヘルニアの関係についてはどうですか。
脳浮腫は,脳の水ぶくれです。その悪循環が進むと,脳が膨張して脳圧が上がって頭蓋内圧亢進となっていきます。
その結果,脳の組織が仕切りを越える脳ヘルニアが生じます。
最悪の場合には生命の危機となります。
脳浮腫とは,脳組織内に水が異常に増加し蓄積した状態です。
脳が水ぶくれになることです。
脳浮腫の原因としてはいくつかありますが,交通事故によるものでは脳挫傷,脳内出血等による血管原性浮腫です。
脳内の血液循環をコントロールする血液脳関門(blood brain barrier:BBB)が破綻して,その透過性が亢進するため血管壁が損傷して起こる浮腫です。
それは,血管壁から細胞外包へ水,ナトリウムという血漿由来の成分が漏出してしまうために,内容物の濃度が高くなり浸透圧の原理から正常な毛細血管の血液から水分を引いて来るために浮腫が発生するのです。
浸透圧の原理とは,平衡状態を保つために濃度の低い溶液から濃度の高い溶液へ移動することです。
脳浮腫の診断としては,画像が有用です。
それは,脳浮腫は組織局所の水分が増加した状態ですから,CTでは低吸収域,MRIのT1強調画像では低信号像,T2強調画像
では高信号像を呈します。またMRIの拡散強調画像(DWI)やFLAIR画像も浮腫を高信号として抽出できるので有用とされています。
脳浮腫MRI
2 脳浮腫による悪循環が起こるとどうなりますか。 (クリックすると回答)
脳浮腫がどんどん進んでしまうと,脳の容積もどんどん膨張して大きくなっていきます。
一定の容積しかない頭蓋内では,そのために当然に頭蓋内圧が上昇し亢進します。
そして,脳の血流が悪くなり,酸素不足をもたらして,ますます脳浮腫を進行させます。
こうして脳浮腫は悪循環となっていって生命の危機をもたらしかねない状態にまで至っていくのです。
頭蓋内腔は閉じられた頭蓋骨によって閉じられた空間で一定の容積しかありません。
従って,正常な状態では頭蓋内圧は一定でなければなりません。
正常値の上限は15㎜Hg程度で,それ以上の値が持続することは異常であり,それを頭蓋内圧亢進と言います。
脳浮腫がどんどん進んでしまうと,あるいは脳出血がとまらないと,当然に頭蓋内圧亢進となっていきます。
頭蓋内圧亢進をそのままにしておけば,意識障害から意識消失にいたり,脳ヘルニアをもたらしたり,生命の危機をもたらしかねない状態にまで至っていくのです。
頭蓋内腔はテントと呼ばれる硬膜で仕切りがありますが,頭蓋内圧亢進が進行して,脳組織が仕切りを越えて隣接した腔に嵌入(かんにゅう,入り込むことです。)した状態を言います。
脳ヘルニアは,生命の危機に直結してしまい,一旦起こってしまうと救命が極めて困難であるために未然に防止することが重要であるとされています。
脳ヘルニアMRI