Q.頚椎捻挫(むち打ち)の治療中に治療費の一括払い切りをされたらどうなりますか。
治療費について任意保険を取り扱っている損害保険会社(共済)が一括払いをしている場合に,
一方的にその一括払いを切りに来る可能性があります。
治療中ですので,それに対抗する方法は特にありません。
症状に応じて健康保険を使用して治療を継続するか,
症状固定とするか
を迫られる結論になるので,十分な検討が必要です。
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なお詳細は続きをご覧ください。
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治療費の一括払い切り
(1)治療費の一括払いとは
任意保険を取り扱っている損害保険会社(共済)が,
任意保険金を支払う際に自賠責保険金の支払相当額を立て替えて支払う制度です。
医療機関に対する治療費の支払いもこれに基づいて任意保険を取り扱っている損害保険会社(共済)から
医療機関に対して自賠責保険金の分も取り込んだ形で,
当初から直接に支払う形で行われています。
(2)治療費の一括払いの法的性格
任意保険がある損害保険会社(共済)の
医療機関に対する一種のサービスにすぎず
法的な権利義務関係が成立するものではありません。
(3)治療費の一括払い切りとは
その損害保険会社(共済)の医療機関に対する治療費を
今後は支払わないという通告です。
2 一括払い切りをされたらどうなるか。
(1)医療機関と損害保険会社(共済)
医療機関から,いくら診療報酬明細書を送って自由診療による請求をしても損害保険会社(共済)は支払をしません。
この点は,一括払いの法的性格が一種のサービスにすぎないことから
法的な請求権は発生せず,訴訟をしたとしても意味はありません。
(2)被害者=患者と医療機関
治療費が損害保険会社(共済)から回収できないとなると,
①自由診療のまま被害者=患者の治療を継続するか,
②健康保険に切り替えて継続するか,
③治療の中止あるいは転院
を迫られることになります。
3 一括払い切りをされたらどうするか
(1)治療を継続するかどうかを考えて下さい
担当医とも相談をして,今後の治療方針とそれによってどこまで症状が改善するかを尋ねて下さい。
ま
た,症状固定といってもいい状態であるかを率直に質問して下さい。
それと共に,打ち切られる3ヶ月前と比べて症状がどこまで改善したのか,
そして治療内容がその間に同じことがくり返されたのか,
それとも違う治療がされたのかどうかをよく思い出して下さい。
(2)治療を継続する場合
同じ医療機関で治療を継続してもらえるのか,
その場合に,健康保険を使用してリハビリを含めて同じ治療が継続できるかを尋ねて下さい。
自由診療でなければならない場合には,金額も多額となり,
その負担した金額が回収できないリスクもありますから,
十分な効果が見込まれるかはよく考えて下さい。
その上で,治療を継続して後遺障害が認定された場合には,打ち切られた以降の治療費も回収できる可能性があります
(但し,症状固定時期をめぐって,やはり一括払いを打ち切った時点であったとして否定される可能性があります。)。
(3)治療を中止する場合
特に問題はありません。症状固定として後遺障害申請をするかどうかを検討します。
(4)治療継続を別の医療機関で行いたいという場合
極めて,困難な道です。
それは,任意保険がある損害保険会社(共済)から一旦はノーと言われてしまっていることを承知で後の治療を引き受ける医療機関は極めて希だからです。
特に,頚椎捻挫,腰椎捻挫で画像所見・神経学的所見に異常が認められずに
痛みだけである場合には,引き受けてもらえたとしても,
その後の治療費について回収できる見通しは原則として厳しいと言えます。
むち打ちの一般的な症状経過と症状固定(リンク)