Q.振戦(しんせん)とは何ですか。
振戦とは,身体の一部あるいは全身が不随意に規則的にふるえることです。
振戦は,人間が自らの意思によって行う運動ではありません。
その意味では広く不随意運動と言われています。
不随意運動は,パーキンソン病と同じ錐体外路症候群と言われています。
英語:tremor
振戦とは,ふるえのことです。身体の一部あるいは全身が不随意に規則的にふるえることです。
なお,正常人でも細かく速い姿勢時振戦がみられます。
ここでは病的な振戦が問題となります。
2 振戦の種類には,どのようなものがありますか。 (クリックすると回答)
(1)静止時振戦
罹患肢を静止しているとふるえるもので,動くと止まります。
パーキンソン病によく見られます。手指にもみられることがあります。
(2)姿勢時振戦
座位あるいは立位で上肢を伸展挙上(腕を肩より上に伸ばしていくこと),あるいは手指を伸展した際にふるえるものです。
頭部が揺れること(よこゆれ)も含みます。下肢に出現することもあります。安静にしていれば出現しません。
(3)企図時振戦
患者の意思による動作によってふるえるもので目標に向かうにつれてふるえも大きくなります。
目標に到達してもその姿勢を保とうとするとふるえは続きます。
(4)運動時振戦
書字を含む動作が行われるとふるえが出現して,動作をやめると停止します。
3 不随意運動のメカニズムは,どうなっていますか。 (クリックすると回答)
振戦は,人間が自らの意思によって行う運動ではありません。
その意味では広く不随意運動と言われています。
不随意運動は,パーキンソン病と同じ錐体外路症候群と言われています。
振戦については,小脳性運動失調症による場合もありますが,錐体外路症候群によるものもあります。
大脳の中央基底部にある灰白質は1つの回路を作っており大脳基底核としての運動の調整に重要な役割を果たしています。
つまり大脳基底核は運動の発動・速度・大きさ・量の調整という錐体路系の出力に対する運動安全装置の機能をになっています。
なお,錐体路とは,大脳皮質の運動野,連合野から出て,延髄を通過して脊髄に下行する運動性経路で,随意運動の命令を伝えるものです。
大脳基底核は,その意味で錐体路系を調整する運動安全装置なのです。
この運動安全装置が効き過ぎるのがパーキンソン病であり,効かなくなるのが錐体外路症候群なのです。
ですから,両者は正反対の疾患ですが,運動安全装置の調子が悪いと言うことでは同じことです。