Q.心因性の片麻痺か,器質性の片麻痺かを区別することができますか。
私たちの日常の運動はいくつもの運動が組み合わされたものです。
正常であれば,それぞれの調和がとれています。
器質性の麻痺があると,その調和が弱くなったり消失してしまいます。これを協働収縮異常(dyssynergia)と言います。
片麻痺らしきものは,心因性でも生じることがあります。
器質性かどうかを区別するのは協働収縮異常dyssynergiaを示す徴候があるかどうかによります。
協働収縮異常(dyssynergia)を示す徴候には以下のようなものがあります。
この徴候を示さないものは,心因性のものと言えそうです。
(1)スーク指徴候
両手を上に挙げてください。片方だけ伸びて指の間が開いていませんか?
その手側に片麻痺があります。
(2)ワルテンベルク徴候
手を回外位として検者に手首を下からしっかりと握ってもらいます。
その後に母指以外の4本を曲げて検者が右手の4本をそれに引っかけます。
両方が引っ張り合うようにするのです。
正常であれば,母指は,ほとんど動きません。
しかし,錐体路障害があると母指は著しく内転・屈曲します。
これをワルテンベルク徴候陽性と言います。
(1)バビンスキー屈股現象
仰向けに寝てみてください。両手を胸の上に置いたままで起き上がってみてください。両足とも動かずに起き上がれましたか?
どちらかの足が股関節の所で曲がって,足が床から浮き上がっていませんか?
そうなった場合をバビンスキー屈股現象と言います。
これが起きると言うことは,起きた側の足に片麻痺があると言うことです。
健常な足はそのまま動きません。
なお,心因性の場合には逆に健常な足が挙がって来ます。
(2)フーヴァー徴候
仰向けに寝てみてください。
どなたかに(普通はお医者さんでしょうが)両かかとの下に手を入れてもらってください。
そして,片足ずつ膝を伸ばしたままで上に挙げてみてください。
その時に,かかとを手で支えている人が,挙げていない側のかかとに加わる力を感じ取ります。
その人は,左右どちらの足を上げたときに片方のかかとに感じる力を強いと感じたでしょうか。同じだったでしょうか。
感じる力の強さに違いがありますか?その場合に力を強く感じるかかとの足に片麻痺があります。
これをフーヴァー徴候と言います。
(3)シュトリンベン現象あるいは前脛骨筋現象
仰向けに寝てみてください。
そしてどなたかに両足の膝の上から力を加えてもらってください。
あなたは,それに対して股関節,膝関節を曲げてみてください。
きちんと足底が曲がりますか?
足首の所で内側に曲がったり,足の甲がそったりしていませんか?
そのような現象をシュトリンベン現象あるいは前脛骨筋現象と言います。
その場合には,その足側に片麻痺があります。
(4)膝屈曲試験
直立で膝を曲げずに立ってみてください。
足指は床から浮かせずに床につけてください。膝を曲げずに直立できますか?膝が曲がった方の足側に片麻痺があります。