Q.高次脳機能障害におけるウェクスラー成人向け知能テストとは何ですか。

[WAIS-R,WAIS-Ⅲ,ウェクスラー,知能検査,長谷川式]

A.


高次脳機能障害の知能検査として一般に実施される知能検査です。
WAIS-R あるいは日本向けにはWAIS-ⅢWechsler Abbreviated Scale of Intelligence ウェクスラー成人向け知能テスト第3版が利用されています。

長谷川式知能評価スケールHDS-R,MMSE=mini mental state examinationでスクリーニングして認知力低下が疑われたとしても,IQが境界線である70~79より下の69まで低下していなく,むしろ平均の下である80~89や平均90~109ということが多いからです。
適用年齢は16~89歳です。

1 WAIS-Ⅲは,どのようなものですか。(クリックすると回答)


言語性IQ
動作性IQ
総合IQ
となっています。
つまり大きく言語性テストVIQ(verbal test),動作性テスト(performance test)に分かれております。

そしてそれぞれに7つの下位検査があります。
それぞれから言語性IQ(VIQ)と動作性IQ(PIQ)が計算されて総合IQが算出されます。

IQの平均は100で標準偏差は15(平均より上下に分散)です。
したがって約3分の2程度の成人のIQはこの範囲(85~115)に含まれます。

受傷前の学力が高く知識が豊富であった場合には言語性IQとしては,低下しないこともあります。
そこで,言語性IQに対して動作性IQが低下しているか,その開きはどの位あるか,あるいは,下位検査の中でどのようなばらつきがあるのか,著しく点数が低いものがあるのか等から判断がされます。

2 言語性テストVIQ(verbal test)の内容(下位検査部分)はどうですか。(クリックすると回答)


①文化によって獲得した一般知識の程度
②理解
抽象的な社会慣習,規則,経験を扱う能力
③算数
数学問題を暗算する集中力
④類似
抽象言語理解
⑤単語
学習や理解の程度、および語彙の言語表現力
⑥数唱
注意・集中 数唱には,順唱と逆唱があります。
(順唱とは数字を順番に言うこと,逆唱とは数字を逆順で言うことです。)
⑦語音整列
注意と作動記憶


3 動作性テスト(performance test) の内容(下位検査部分)はどうですか。(クリックすると回答)


①絵画完成
視覚的細部を素早く感知する能力
②符号
視覚と運動協応関係,運動と心のスピード
③積木模様
空間認知,視覚的抽象処理,問題解決力
④行列推理
非言語的抽象課題解決力,帰納的推理,空間推理
⑤絵画配列
論理および逐次的推理,社会見識
⑥記号探し
視覚認知,スピード
⑦組合せ
視覚分析,統合,組み立て

なお,視覚に障害がある場合には,この動作性テストに多く含まれる視覚を要する問題に対して,実施できないことがあります。
また,2時間程度の検査のために,受検した方からは,大変につらい検査だったと言われます。

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