Q.高次脳機能障害の失行とは何ですか。失行のスクリーニングテストと特徴はどのようなものですか。
失行症とは,大脳の特定部位の局所的損傷)によって生じるものです。
脳で(心で)思った通りに動作ができない症状を言います。
その失行の表れは損傷の部位や程度によって様々です。
主に,観念運動失行・観念失行・構成失行・着衣失行があります。
観念運動失行・観念失行・構成失行・着衣失行があります。
(1)観念運動失行
失行の中で最も中核をなしています。
比較的な簡単な今までは苦もなくできていた動作が自然にはできるのに,命令されると,あるいは意図的にしようとするとうまくできなくなってしまう。
または,動作をマネしたり道具を使うふりをするように命じられるとできない状態です。
(2)観念失行
比較的複雑な行為をするときに,ここの行為をばらばらにすればできるのに,連続してまとめることができないものを言います。
例えば,マッチでタバコに火をつける動作について言えばマッチ棒を逆さまに持ったり,あるいはタバコでマッチ箱をこすったりという誤った動作をします。
自分でしようとしている行為全体の計画が立てられない,行為系列化の障害です。
(3)構成失行
構成行為の障害であり,操作の空間的位置付けが侵されているために図形がうまくかけなかったり,積み木で形を作ることができなかったりします。
(4)着衣失行
衣服の脱着だけに現れる失行です。
衣服の前後の間違い,上着なのに足を入れようとしたり,着物が正しく着られない失行です。
2 失行のスクリーニングテスト(簡単な見分け方)は,ありますか。(クリックすると回答)
まずは,口頭で命令してみて,うまくできな時には見本を見せてマネをさせます。
(1)さようならと手を振って下さい
(2)おいでおいでをして下さい
(3)兵隊さんの敬礼をして下さい
(4)「しー」といって静かにさせる身振りをして下さい
(5)歯ブラシを持ったつもりで歯を磨くマネをして下さい
(6)櫛を持ったつもりで髪の毛をとかすマネをして下さい
(7)ドアに鍵をかけるマネをして下さい
(8)金槌を持ったつもりで釘を打つマネをして下さい
失行の障害が出ている場合は,これらの動作のいくつかがうまくできないということになります。別の動作,意味不明の動作となったり,あるいは,命じられたこととは違う直前の動作をしてみたり,歯を磨いているように見えるが別の空間で動かす保続がみられます。
(以上は石合純夫著「高次脳機能障害学」p52 医歯薬出版株式会社より一部引用させていただきました。)
3 失行の一般的な特徴はどのようなものですか。(クリックすると回答)
①学習されたすべての動作が障害されることはない
②同じ動作でもできる時とできない時がある
③口頭命令よりも模倣が容易
④物品を使う身振りよりも実際の使用の方が容易
⑤検査場面よりも日常生活場面の方が容易
日常生活場面ではなく,実際に物品を使うものではない,まさに「観念的な」動作について,できないものがあると言うことです。
しかし,必ずしもその通りではなく,身振りはできていても逆に実際の使用が障害されていることがあります。
また,物品の使用については持ち方の誤りが多いということです。
(以上は石合純夫著「高次脳機能障害学」p53 医歯薬出版株式会社より一部引用させていただきました。)