Q.FDG-PETとは何ですか。また何が分かるのですか。

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A.


ブドウ糖によく似た物質に放射性フッ素をつけたものを用いたPETです。したがって,実際のグルコースの代謝に近い形での脳内の血流循環と,それによるグルコース及び酸素供給が十分でエネルギー代謝に障害が生じていないかを調べることができるのです。

1 PETとは 
英語のpositron emission tomographyの頭文字を並べたものです。 
陽電子放射断層法あるいはポジトロンCTとも言います。
ポジトロン(陽電子)を放出する陽電子放出核種(核種とは原子又は原子核の種類)から出された光子(消滅放射線)を画像化したものです。この陽電子放出核種は,医用サイクロトロンで作られたものを用います。

2 PETの原理
ポジトロン(陽電子)は,陰電子(いわゆる電子)と結合して消滅しますが,その消滅する際に2本の光子(消滅放射線)を同時に180°方向に放出します。この放出される消滅放射線を同時計数法により検出して画像化するのです。脳内の放射性同位元素(RI,radioisotope放射性核種と同じ意味です)の位置と量を正確に知ることができ,脳深部からのデータも得やすいという利点があるとされています。

3 PETによる脳循環・代謝測定
脳血流量,脳酸素摂取率,脳酸素代謝率,脳血液量,脳グルコース代謝率の測定とイメージングを行うことができます。

4 脳のエネルギー代謝
脳は,活発にエネルギー代謝が行われている臓器です。重量は成人体重の2%にすぎないのに,脳の酸素消費量は全酸素消費量の約20%を占めています。また,脳は他の組織のようにグルコース以外の物質を利用できないのにかかわらず,脳にはグルコースを備蓄する能力があることはあるのですが,極端に限られています。なお,グルコースとはブドウ糖であり,血中にあるグルコースがいわゆる血糖です。脳が正常な活動を維持していくためには,絶えずグルコースが供給されていなければならず,それは酸素と共に血液から供給される。脳への血流が低下すると,脳は容易に非可逆的損傷に至ってしまうのです。
この様に,脳への血液供給が低下すると,グルコースの枯渇と酸素供給の減少によって脳はエネルギー産出ができなくなり,すぐに非可逆的損傷になり,重篤な状況が起こります。
PETによる脳循環・代謝測定は,この様に脳内の血流循環と,それによるグルコース及び酸素供給が十分でエネルギー代謝に障害が生じていないかを調べることができるのです。

5 FDG-PETとは
フルオロデオキシグルコースというブドウ糖によく似た物質に放射性フッ素をつけたものを用いたPETです。したがって,実際のグルコースの代謝に近い形での脳内の血流循環と,それによるグルコース及び酸素供給が十分でエネルギー代謝に障害が生じていないかを調べることができるのです。

6 具体的な画像所見は
例えば「両側前頭葉前野内側円蓋部および内側部から前部帯状回にかけて一部重度の局所糖代謝低下域がみられます。」というように示されます。
ちなみに,これは,びまん性軸索損傷として典型的な所見です。
すなわち,両側で前頭前野内側円蓋部から前部帯状回かけて一部重度の脳血流低下が認められています。前頭前野は前運動野より前の広範な部分です。帯状回は前頭葉の内側に位置するものです。すなわち,この所見によりは,前頭葉の広範な部分について,その深部に至るまで糖代謝低下が認められ,それは,びまん性軸索損傷として典型的な所見と考えられるのです。

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