Q.高次脳機能障害での障害される「記憶」とは何ですか。
記憶とは,
エピソード,知識,行為,手続きのいかんを問わず,
あらゆる体験を脳が処理できる形に符号化し,貯蔵し,取り出す機能の総体を言うとされています。
記憶はその理解のためにさらに次のように分類されています。
1 陳述記憶と手続き記憶
2 時間的側面からの分類
3
エピソード記憶と意味記憶
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なお,詳細は続きをご覧ください。
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1 陳述記憶と手続き記憶
(1)陳述記憶(宣言的記憶)declarative memory
記憶情報を言語による表現によるかどうかはともかく,
意識的に表現できる,あるいは思考過程と関連して利用できるものを言います。
新しいことが憶えられない,古い体験や知識の想起が難しいと言うときに問題となるのが,この陳述記憶(宣言的記憶)です。
(2)手続き記憶procedural memory
動作,行為,行動における技能,
また,知覚を介した認知における効率的操作・処理を獲得し保持する記憶を言います。
手続き記憶の取り出しは意識せずに自動的に行われます。
また,手続き記憶の再生は,記憶成立の際におけるエピソードを思い出す必要なく行われます。
2 時間的側面からの分類
神経学臨床では,短い方から即時記憶,近時記憶,遠隔記憶と分類します。
即時記憶に対して,近時記憶→遠隔記憶と時間の流れに従って記憶が堅固な貯蔵をされていきます。
概念的には様々な干渉に耐えてふるいにかけられて記憶が貯蔵されていきます。
近時記憶→遠隔記憶とワーキングメモリ容量が増えていくイメージです。
3 エピソード記憶と意味記憶
(1)エピソード記憶
特定の時と場所で起こった個人的体験の情報に関する記憶です。
記憶情報の記号化と取り出しという近時記憶,遠隔記憶との過程に明確に分けることができる陳述記憶です。
(2)意味記憶
事実,概念,語彙などの知識全般を含み,基本的にいつでも取り出せる確立した記憶です。
いつどこでどのようにして憶えたかという記憶過程にまつわるエピソードとは切り離して独立して利用できるものです。
例えば,今は夏ですが,セミとはどのようなものかについては,いつどこでどのようにして憶えたかは,記憶の彼方にあると思います。
しかし,セミとはどのようなものであるかは,説明が可能です。
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記憶障害(リンク)