Q.肩鎖関節脱臼の治療と後遺障害(後遺症)はどうなっていますか。
鎖骨に影響して鎖骨変形として後遺障害が残る可能性があります。
その場合には,12級5号の該当性が考えられます。
あるいは,痛みが残存すれば14級9号の可能性があります。
肩と鎖骨を結ぶ関節が肩鎖関節ですが,交通事故では肩を下に転倒した場合に生じます。
肩鎖関節に関する2つの靱帯,肩鎖靱帯と烏口靱帯のいずれもが断裂して鎖骨が転位することで生じる脱臼です。
2 肩鎖関節脱臼の受傷程度は,どう判断するのですか。 (クリックすると回答)
2つの靱帯(肩鎖靱帯と烏口靱帯)の受傷の有無と程度で3段階に分類されています。
第Ⅰ損傷=鎖骨と肩峰の位置関係は正常に保たれているものの,肩鎖関節部に圧痛があるものです。
第Ⅱ損傷=肩鎖靱帯は完全に断裂しているものの,烏口靱帯は正常か部分的に損傷しているものです。
第Ⅲ損傷=肩鎖靱帯,烏口靱帯(リンク)がともに,完全断裂しているものです。
第Ⅰ損傷と第Ⅱ損傷であれば三角布で固定するなどして保存的に4~6週間で肩関節の動きが正常となります。そうなれば症状固定です。
第Ⅲ損傷については,なかなか難しく観血術をすべきかの選択が問題となります。
つまり,断裂した靱帯を手術で縫合するかの選択となります。
4 後遺症(後遺障害等級)は,どうですか。 (クリックすると回答)
第Ⅰ損傷と第Ⅱ損傷であれば,また第Ⅲ損傷でも観血術で靱帯損傷が修復されれば後遺障害は残らないといえます。
ただし,圧痛が残存すれば14級9号となる可能性はあります。
第Ⅲ損傷で放置が選択された場合に,鎖骨が上方に転位したままになり,それが外見上明らかであれば,変形治癒として12級5号となる可能性があります。
肩峰と鎖骨の間の関節です。
肩鎖靱帯と,烏口靱帯の二つの靱帯に支えられています。
肩峰は,文字通り肩の先っぽのことです。
肩鎖靱帯は,関節包を補強して肩鎖関節の前後方向の安定性を保っています。
烏口靱帯は,肩鎖関節から少し離れたところにあって,その上下方向の安定性を保っています。
外傷によって,この二つの靱帯のいずれか,あるいは両方が損傷することで,肩鎖関節のダメージが異なってくるのです。