Q.年少者の死亡による逸失利益の計算はどうなりますか。男女の違いはありますか。

[三庁共同提言,女子,小学生,少女,年少者,幼児,死亡,生活費控除率,賃金センサス,逸失利益]

A.

小学生等の幼児については,労働能力喪失期間について,成人とは異なるやり方をします。

幼児の場合には,男女の違いをどのように考えるのかが問題となっています。
基礎収入の賃金センサスについて男女差を採用するのか,また,生活費控除率について違いを設けるが問題となります。

最近,一定の方向性に向かいつつあると言えます。
つまり原則として
男子は「全男性労働者全年齢学歴計平均賃金として生活費控除率は50%」
女子は「全労働者(男女)全年齢学歴計平均賃金として生活費控除率は45%」
のやり方が一般的と言えます。

なお,年少者の範囲については,特に女子に関しては依然として争点とはなっております。

 

1 死亡逸失利益の計算は,どうするのですか。   (クリックすると回答)


逸失利益とは,死亡していなければ得られたであろう利益のことです。
計算式としては,次のようになります。

基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

生活費控除率を差し引くのは,生存したであろう生活費が死亡したことによって不要となったための損益相殺と言うことで説明されています。

就労可能年数に対応するライプニッツ係数とは,現在年齢から67歳までの年数に対応するライプニッツ係数ということです。

なお,この計算式は,18歳を超える有職者または就労可能者を前提にしており,18歳未満の場合は,そのままでは当てはめることはできませんので,次のやり方になります。


基礎収入額×(1-生活費控除率)×
(①3歳から67歳までのライプニッツ係数-②3歳から18歳までのライプニッツ係数)

例えば3歳では
①67年-3年=64年であるので64年に対応するライプニッツ係数=19.1191
②18年-3年=15年であるので15年に対応するライプニッツ係数=10.3797
すると,19.1191-10.3797=8.7394
これが3歳に適用されるライプニッツ係数となります。

例えば12歳では
①67年-12年=55年であるので55年に対応するライプニッツ係数=18.6335
②18年-12年=6年であるので6年に対応するライプニッツ係数= 5.0757すると,18.6335-5.0757=13.5578
これが12歳に適用されるライプニッツ係数となります。

2 男子年少者の死亡逸失利益で問題となることは,何ですか。  (クリックすると回答)


判決の傾向は全男性労働者平均賃金として生活費控除率は50%とすることが一般的と言えます。

例を挙げます。

(1)性別 男性
(2)職業 小学生
(3)死亡時年齢 8歳
(4)年収 なし
(5)家族 両親

逸失利益の計算式は,
基礎収入×(1-生活費控除率)×(死亡時年齢から67歳までの労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)です。

8歳から67歳までの労働能力喪失期間は59年間になります。59年間のライプニッツ係数は18.8758です。
しかし,8歳から18歳からの10年間は働くことはできないために10年間のライプニッツ係数を差し引く必要があります。
すると,この場合は,59年間のライプニッツ係数18.8758-10年間のライプニッツ係数7.7217となります。

当然に独身の男子であるために生活費控除率は,50%となります。

基礎収入については,男子全年齢学歴計平均賃金は5,241,000円(平成25年度)となります。
すると,計算式は,
5,241,000円円 × (1-0.5)×(18.8758-7.7217)
=29,229,319円
となります。

3 男子と女子の違いに関する議論はどのようなものですか。  (クリックすると回答)


基礎収入については,年少女子の基礎収入を女子平均賃金とすべきか全労働者(男女)平均賃金とすべきかは議論があるところでした。
それは,男女格差がある現実に着目するのか,賠償においては男女差別を是正する理想を貫くのかという違いです。

この点については,「交通賠償論の新次元」(判例タイムズ社 p27~31)では,三庁共同提言以降の平成19年4月21日時点での東京,大阪,名古屋の各地方裁判所交通専門部の総括裁判官から各現状での女の子の死亡逸失利益に関する傾向ないし方向性が述べられています。

それによれば,基礎収入は全労働者(男女)平均賃金とする代わりに生活費控除率を独身女子の30%を独身男子の50%に近づけた45%とするものです。
東京地裁をはじめとして各地の裁判所も同様の傾向になっていると言えます。

例を挙げます。
(1)性別 女性
(2)職業 小学生
(3)死亡時年齢 8歳
(4)年収 なし
(5)家族 両親

逸失利益の計算式は,
基礎収入×(1-生活費控除率)×(死亡時年齢から67歳までの労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)です。

8歳から67歳までの労働能力喪失期間は59年間になります。
59年間のライプニッツ係数は18.8758です。
しかし,8歳から18歳からの10年間は働くことはできないために10年間のライプニッツ係数を差し引く必要があります。
すると,この場合は,59年間のライプニッツ係数18.8758-10年間のライプニッツ係数7.7217となります。

基礎収入については,全労働者(男女)全年齢学歴計平均賃金が適用され,生活費控除率は45%とする裁判所での運用が定着してきています。

よって全労働者(男女)全年齢学歴計平均賃金は4,689,300円(平成25年度)となります。

すると,計算式は,
4,689,300円 × (1-0.45)×(18.8758-7.7217)
=28,767,706円
となります。

4 逸失利益で問題となる年少女子の範囲は何歳までを言うのでしょうか。  (クリックすると回答)

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年少者とは,18歳未満を前提としても何歳までを言うのか,義務教育終了までなのか,議論があります。

必ずしも統一されているわけではありませんが,およそ中学生までとして,それ以上の年齢であっても含まれる可能性があると言えます。

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