Q.貸家業のような自営の場合に死亡による逸失利益の計算はどうなりますか。
貸家業のような場合に休業損害の対象にはなりません。
しかし,逸失利益に関しては,労働の必要がなく就労をしていなかっただけであり,労働能力がある限り基礎収入として年齢別賃金センサスを勘案するなどして逸失利益は認められる可能性があります。
(1)性別 女性
(2)職業 貸家業
(3)死亡時年齢 69歳
(4)年収 貸家業としては年600万円 年金としては120万円
(5)家族 単身(夫は死別,子は独立)
夫の残した財産で,貸家業を営んでいた場合です。
2 逸失利益で何が問題となるのでしょうか。 (クリックすると回答)
このような場合には,家賃は,いわゆる勤労所得ではなく,言葉は悪いですが,不労所得となって,休業損害としては否定されます。
しかし,死亡逸失利益については異なります。
それは「労働していなかったのは,家賃等による収入及び年金関係の収入があってこれにより労働の必要がなくなっていたからであり,労働の能力が欠けていた」わけではないからです。
3 それではどのように考えるべきでしょうか。 (クリックすると回答)
このような場合には,一定の逸失利益を年金の逸失利益とは別に認めるのが相当です。
「68歳以上の女子平均給与を基礎に5年間の逸失利益」を認めた判決もあります(例えば,松山地方裁判所昭和61年5月26日判決)。
4 具体的な逸失利益はどうなりますか。 (クリックすると回答)
計算式は,
68歳以上の女子全学歴計・年齢別平均賃金2,790,400円(平成22年賃金センサス),生活費控除率30%,5年間の喪失期間として
2,790,400円 × (1-0.3)×4.3295=8,456,725円
となります。
年金については,生活費控除率50%,20年間の喪失期間として
1,200,000× (1-0.5)×12.4622=7,477,320円
年金については,ほとんど生活費に使われてしまうので生活費控除率50%とするのが一般的です。
以上から,逸失利益は合計15,934,045円となります。