Q.逆行性健忘とは何ですか。
A.
逆行性健忘とは記憶に関する神経機構が障害された時点よりも前の情報の記憶障害を言います。その時点よりも新しい情報の記憶障害は前向性健忘と言います。
1 逆行性健忘は,記憶情報がどこまでさかのぼって障害されているのかを期間として表します。
2 古い情報よりも最近の情報の障害の方が強いという時間的勾配があることが少なくないとされています(Ribotの法則)。
3
発症当日から数日前という比較的近い記憶については近時記憶,古い情報は遠隔記憶の障害となります。
4 器質的脳損傷においては,逆行性健忘が明らかであるものの,前向性健忘が無いか,軽微のものであり,心因性とは考えられない場合に症状として認められます。たいていは,初期に見られた前向性健忘が改善されて逆行性健忘主体となります。そのために,器質的脳損傷の場合には,孤立性逆行性健忘とも言われています。
(石合純夫著 「高次脳機能障害学」医歯薬出版(株)p163参照)