Q.運動麻痺と脳あるいは脊髄等における病巣の関係はありますか。
A.
1 (大脳)皮質障害
(1)運動野並びにその近傍に限局→それに対応した顔面・上肢・下肢のみの単麻痺
(2)広範囲の皮質障害→対側全体の片麻痺
(3)皮質運動野area4のみ→弛緩性麻痺
(4)皮質運動野area4+前運動野→痙性麻痺
2 内包障害
小範囲の病巣でも→痙性麻痺
3 大脳脚障害
大脳脚の腹側より下位ニューロンである動眼神経が出ている
→病側の動眼神経麻痺+対側の痙性麻痺=交代性片麻痺
4
橋障害
→病側の末梢神経麻痺+対側の片麻痺=ミラード・グプラー症候群
→病側の末梢神経麻痺+対側の片麻痺+外転神経麻痺=フォビーユ症候群(下交代性片麻痺)
5 延髄障害
→交代性麻痺として,病側の舌下神経麻痺+対側の片麻痺=ジャクソン症候群
なお,錐体交叉の部が限局性に一側に障害→同側の上肢と対側の下肢が痙性麻痺=交叉性片麻痺
これは,錐体交叉の部においては,皮質脊髄路のうちの上肢へのニューロンは上部で,下肢へのニューロンはその下部で交叉しているため。
6 脊髄障害
頚髄→四肢麻痺が発生しやすい
胸髄・上部腰髄→両下肢の痙性麻痺(対麻痺)
7 前角障害
弛緩性麻痺で,一筋群のみの麻痺,単麻痺あるいは対麻痺
8 末梢神経障害
単純な筋群の麻痺
(現代の脳神経外科学 坪川孝志著 金原出版社 p92から94)