Q.単身の高齢者死亡慰謝料額はどの位でしょうか。
1 高齢者の死亡慰謝料の基準
いわゆる赤い本では「その他」として2000万円~2200万円が基準額とされています。
しかし,高齢者の場合には,人生を享受している度合を考慮し,やや低めの認定が多いといわれることがあります。
但し,これは,「その他」には高齢者のみならず,幼児を含む独身者も入っているからです。
そのような「若年者」から見て,やや低めの認定が多いとは,2200万円まではいかないことが多いということです。
2 基準の最低額を下回るのは,どのような場合ですか。
相続人が,疎遠にしていた兄弟姉妹等のみの場合に下回ることがあります。
基準から見たならば「減額」という印象です。
これは,俗に言う「笑う相続人」の問題です。
つまり,面倒を見たこともないし,交流もない,さらに顔も見たこともない相続人が,たまたま相続人であったために大金を手にすることをできるだけ防ごうという価値判断が働くのです。
3 具体例
(1)被害者(75歳女性)について,幼い頃養子に出されて約60年間全く音信不通であった疎遠の妹のみが相続人の場合に死亡慰謝料を1800万円としました(大阪地裁平成8年2月15日判決)
(2)被害者(67歳男性,身体障害者)について,約35年前に別れたままで音信不通であった弟と,面識が全くない姪の二人の相続人の場合に死亡慰謝料を1800万円としました(大阪地裁平成8年2月15日判決)
(3)被害者(77歳男性)について,相続人が被害者の母の養子である妹(被害者から見れば義理の妹)であった場合に死亡慰謝料を1700万円としました(大阪高裁平成15年1月31日判決)
【まとめ】
一応の結論としては,2000万円を下回って1800万円,あるいはそれ以下となることがあり得ると言えます。