Q.交通事故による脳浮腫はどのようにして起こるのですか。
脳組織の水分量が増加して,脳組織の容積が増加している状態を言います。
交通事故では,血液脳関門が破綻した血管性浮腫によります。
それは,脳挫傷,脳内出血を原因とします。
脳浮腫による頭蓋内圧亢進が悪循環となって,しばしば重篤な状況を引き起こします。
脳組織の水分量が増加して,脳組織の容積が増加している状態を言います。
言葉としては,悪いですが,要するに水ぶくれの状態です。
脳浮腫は発生機序から
(1)血管性浮腫
(2)細胞毒性浮腫
(3)間質性浮腫
の3つに分類されています。
交通事故によるものとしては,(1)血管性浮腫が,当てはまります。
血管性浮腫とは,血液脳関門が破綻して,その透過性が亢進するため,血清成分が毛細管外に漏出することにより発生するものです。
血液脳関門(blood brain barrier:BBBと言うようです。)とは,
毛細血管から脳へ物質を移行させるに際して物理化学的性状によって選択的に透過させる機能を言います。
例えば,グルコースは脳の栄養ですから,容易に移行させますが,高分子タンパクなどは,ほとんど移行しません。
このように,血液脳関門は脳の循環を安定させる重要な役割を果たしています。
血液脳関門が破綻する原因としては,脳挫傷,脳内出血が交通事故としては考えられます。
3 脳浮腫になるとどうなるのでしょうか。 (クリックすると回答)
浮腫自体が軽微ならば,それによる神経伝達障害や神経細胞の障害に至ることはないとされています。
しかし,激しくなると細胞の糖代謝が障害されてエネルギー不足となります。
また,脳容積が増大することが浮腫ですから,頭蓋内圧亢進を発生させて,そのため脳循環障害が招来され,それがさらに脳浮腫を増長するという悪循環になります。
そして,その結果として脳ヘルニアとなるおそれがあります。
脳浮腫から脳ヘルニアとなると極めて死亡を含めた重篤な状況となるおそれがあります。
脳浮腫は組織局所の水分が増加した状態ですから,CTでは低吸収域,MRIのT1強調画像では低信号像,T2強調画像では高信号像を呈します。
またMRIの拡散強調画像(DWI)やFLAIR画像も浮腫を高信号として抽出できるので有用とされています。
脳実質の容積が増加するものには,脳浮腫と脳腫脹があります。
脳浮腫が細胞内・外腔に水分が貯留するものであるのに対して,脳腫脹は脳内の血管が病的に拡張して血液が貯留するものです。