Q.外傷性股関節脱臼とは何ですか。後遺障害(後遺症)となるのは,どの場合ですか。
交通事故により発症の多い傷病です。
症状の程度が重くて,大腿骨骨頭が壊死するか否かが重要な問題となります。
壊死した場合あるいは辛うじて壊死を免れた場合に後遺障害が生じるおそれがあります。
1 交通事故と外傷性股関節脱臼はどうですか。 (クリックすると回答)
高エネルギーによる股関節の損傷です。
合併症を伴うことが多くあります。
2 外傷性股関節脱臼の分類はどうですか。 (クリックすると回答)
脱臼する方向により後方脱臼・前方脱臼・中心脱臼に分けることができるとされています。
(1)受傷原因
股関節が屈曲位(曲げいている状態)で前方から強い外力が加えられると大腿骨頭部は関節包を破って後方に脱出して脱臼します。
自動車乗車中にダッシュボードに膝が強く打ち付けられたような場合です。そこで,これを別名ダッシュボードと言います。
(2)症状
股関節の自動運動は不能で,他動運動に対しても「ばね様固定」と言われる抵抗があります。
合併症として,坐骨神経麻痺症状を呈することがあるとされています。
(3)治療法
単純な脱臼は徒手整復法で,脱臼骨折となれば手術を要することになります。
(4)合併症
坐骨神経損傷と阻血性骨壊死があります。
特に後者は脱臼の24時間以内の整復がなされなければかなりの可能性で骨頭壊死があり得ます。
(1)原因
股関節に強い外転が強制された場合に,大腿骨頭は前方に脱臼します。
自動車事故では,股関節外転位で膝を強打した場合,しゃがんだ姿勢で背後から強打した場合,高所からの転落で起こります。
(2)治療
一般には全身麻酔による整復です。
(1)中心脱臼とは
骨盤の寛骨臼底の骨折を伴った大腿骨頭部の骨盤内への脱臼を言います。
骨盤の臼蓋部の骨折は粉砕骨折となることが多いとされています。
(2)治療
大腿骨顆上部に鋼線を通して大転子部に釘を入れての牽引となります。
大腿部骨頭壊死となるか,変形性股関節症となる可能性があります。
特に後方脱臼が早期に整復されずに骨頭壊死となった場合には,人工骨頭置換術の問題となります。
なお,後遺障害等級については骨頭壊死を生じない場合には,股関節可動域制限があれば12級7号が,もし可動域制限がなくとも神経症状が残存すれば12級13号の該当性が考えられます。
骨頭壊死を生じた場合には,人工骨頭置換術となり可動域制限に応じて8級相当あるいは10級相当の該当性が考えられます。