Q.嗅覚障害においてアリナミン静脈注射検査所見はどのように扱われますか。
嗅覚障害においてアリナミン静脈注射検査所見はどのように扱われますか。
検査結果が無反応であれば嗅覚脱失となり後遺障害12級相当となります。
1 自賠責認定実務の取り扱い
嗅覚障害については,いわゆる自賠責後遺障害等級表にはなく,労災基準に準拠しています。その労災基準では,嗅覚脱失及び嗅覚の減退については,T&Tオルファクトメータによるとされていますが,ただし,嗅覚脱失にはアリナミン静脈注射検査所見のみによって確認しても差し支えないとされています。
したがって,嗅覚減退の判定には使えないと言うことでもあります。
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アリナミン静脈注射検査について
アリナミンFではだめです。認定の手引きにも明記されています。
アリナミンPによる検査が必要です。その検査が出来ないなら,T&Tオルファクトメータによるべきです。
☆アリナミンPのPとは,プロスルチアミン(Prosultiamine)のPです。
3 アリナミン静脈注射検査所見について
無反応のみが有用な所見です。
無反応とは文字通り,反応なしということです。何も感じないと言うことです。
アリナミン静脈注射の正常とされているのは潜時(反応までの待機期間でしょうか。)8から9秒,持続時間1から2分が正常値とされています。
そこから外れた場合,つまり長かったり短かったりする場合では,嗅覚脱失とは言いません。反応はあるのですから。
また,正常値よりも長かったり短かったりする場合に嗅覚脱失とまでならずとも,嗅覚減退となるかと言えば,労災の手引きを読む限りはそうならないことになります。
☆この点は,味覚減退の判定について,必ずしも有効ではないケースもあったことから平成11年10月8日付「嗅覚及び味覚の検査方法等に係る専門検討会報告書」において,,T&Tオルファクトメータによる基準嗅力検査を採用することが適当とされた経過からすると,アリナミン静脈注射では,嗅覚減退は判定方法としてなじまないと言うべきです。
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嗅覚障害の発生機序
発生機序としては脳自体の出血や浮腫以外に,急激な衝撃による嗅神経枝の断裂や損傷が考えられます。それは次のように分類されます。
(1)鼻骨あるいは鼻中隔骨折による嗅裂部の閉鎖(呼吸性嗅覚障害)
(2)嗅球と篩板との間での嗅糸の断裂(末梢神経性嗅覚障害)
(3)前頭葉,側頭葉の挫傷あるいは血腫(中枢性嗅覚障害)
そして,嗅糸の断裂(末梢神経性嗅覚障害)による場合にはほとんどが嗅覚脱失の状態となり回復は望めないとされ,また嗅球の挫傷では嗅覚の回復は望めないが,前頭葉挫傷では嗅覚脱失となることは少なく,回復の可能性もあるとされています。
(赤い本2004年版p442)
すると,仮に,アリナミン静脈注射検査所見が無反応であったとしても,この発生機序に沿うような受傷がなければ因果関係を否定されることになると考えます。
5 後遺障害(後遺症)
詳細は,こちらをご覧下さい。
☆嗅覚障害とは何ですか。検査方法はどうなっていますか。後遺障害はどうなりますか。---後遺障害賠償は,むさしの森法律事務所へ(リンク)