Q.事業所得者(個人事業者)が,事故後も減収がない場合にも休業損害は認められますか。
事業所得者(個人事業者,自営業者)の休業損害は,現実の収入減があった場合に認められます。
そして事故前後の収入の比較を行い,事故との間に相当因果関係の存在が立証された範囲で賠償を認めることとなるとされています(八木・佐久間 交通損害関係訴訟 青林書院 P141)。
しかし,事故前後の収入において減少がなくとも休業損害が認められる場合があります。
1 家族の協力により減収のない場合はどうですか。(クリックすると回答)
家族で仕事をしている場合には,業種にもよりますが被害者が就労できなくなっていた期間も,カバーされて減収がないこともあり得ます。
妻の協力により減収のない建築工事業代表者について賃セ男性学歴計年齢別平均を基礎収入として判決(大阪地判平成9年3月25日,自動車保険ジャーナル・第1226号)。
は,その趣旨です。
柔道整復師の資格を有する妻と共に整骨院を営む被害者について妻子の働きでのカバーを考慮した判決(大阪地判平成12年3月7日,交民集33巻2号497頁)も,同様です。
2 事故後休業していたのに所得が増加したのは前年までの営業努力による場合はどうですか。(クリックすると回答)
個人事業者(事業所得者)として営業努力の成果が出そうな段階になった時点に事故にあったという事案です。類似のケースは,よく経験するところです。
その場合には,休業していたのに,減収がないと言うことがあります。
しかし,それをもって休業損害を否定することは公平ではありません。
そのような場合に,賃金センサス基礎収入として採用された事案(岡山地判平成12年3月9日,交民集33巻2号511頁),
さらには,事故前に受任した仕事をしていた場合には,事故後に所得が増加することだってあります。そのような場合に事故前年の所得を基礎収入とした事案(東京地判平成18年10月30日,交民集39巻5号1509頁),
があります。