Q.事業所得者(個人事業者)が,事故でできなくなった仕事を別の人に代行してもらった(代替労働力を使用した)場合に,そのための費用を損害として請求できますか。

[ブリーダー,代替労働力,休業損害,個人事業]

A.

被害者が他の者を雇用するなどして事業を継続し収入を維持した場合には,一般に,それに要した必要かつ相当な費用が損害として認められます。

1 代替労働力に関する費用は認められますか。(クリックすると回答)


事故のために業務が行えず,他の人を雇用して業務を継続したならば,その代替労働力に関する費用は認められます。

個人の新聞販売店経営者について,事故のため新聞配達を行えなかった期間の代行の新聞配達要員に支払った派遣料を認めた判決例です(大阪地判平成11年8月31日 自動車保険ジャーナル・第1355号)。


2 代替労働力に対する支払金額が,自分の収入より高い場合はどうなりますか。(クリックすると回答)


緊急に代替労働力を頼む場合には,金額が高くなることが業種によっては起こりえます。
その場合には,事業を中止してしまうと,今後の営業にも悪影響があり得ます。
それを考えると,代替労働力が被害者本人よりも高くなる場合もで,その費用を休業損害として認めることがあり得ます。

特に専門的職種の事例では,認められやすいと思われます。

例えば,

一人で開業している歯科医師(女・39歳,事故当時の年収1048万円余)について,一人で全患者に対する診療行為を行うことができなくなった場合に一部代診を依頼した医師に対する38日分の給与335万円余を認め判決です(横浜地判平成15年3月7日,
自動車保険ジャーナル・第1494号)。

ただし,歯科医師の代診について相場が形成されているとは言えない上に,被害者本人の年収範囲であったことから,金額が妥当とされたものです。



3 動物などの生き物の預かり料は代替労働力として認められますか。(クリックすると回答)


自家繁殖犬舎を含むキャバリエ種の成犬22頭を飼育していた被害者につき,事故による入通院のために犬の飼育が困難となり,
事故後約5ヶ月半の間,1頭あたり1日2万円余で専門の飼育者に預け合計249万円の預かり料を支払った場合に,
キャバリエ犬の飼育には一定の経費の存在が推認されるからその2割相当を経費として控除すべきとして,199万円余を認めた例があります(名古屋地判平成16年9月15日,自動車保険ジャーナル・第1578号)。


主婦兼ブリーダーについて,傷害による入通院によって犬の飼育が困難となり,他人に預けた預かり料を休業損害とは別の損害として認めたものです。
その場合には,休業損害と二重に評価するものではないとしました。

ブリーダーという特殊性からでしょうか。相当因果関係の範囲と考えられます。

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