Q.非接触事故による場合に相手方に対して損害賠償を請求することはできるのでしょうか。

[非接触事故]

A.

接触がないときであっても,車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであって,これによる危難を避けるべき方法を見失うなど,衝突にも比すべき事態である場合には事故と被害者の受傷との間に相当因果関係を認めるのが相当であるとされています 。
問題は,「衝突にも比すべき事態」とは具体的にはどのような場合を言うかです。

裁判となり非接触でも過失を認めている事例については,以下の様に分類することができます。
相手方車両の行動が被害者車両に「運転方法を著しく変更させる措置をとることを余儀なくさせる場合」に該当するならば,非接触でも過失を加害車両運転者に認めていると言えます。

1 交差点内での不適切な右折
2  不適切な車線変更
3  転回(Uターン)方法が不適切
4  対向車線車両の急右折
5 停車車両の急発進
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1 交差点内での不適切な右折とは,どのような場合ですか。   (クリックすると回答)


非接触事故の典型例といえます。
多くが,右折車両の右折方法に問題があり直進車両に対して衝突をするのではないかとのおそれを抱かせるような場合です。その場合には,「運転方法を著しく変更させる措置をとることを余儀なくさせる場合」には衝突に比すべきものと言うことです。

交差点内での右折は対向する直進車に衝突の危険を抱かせるような方法であってはならないものです。

既に被害車両が本件交差点の手前まで迫ってきているのを気づかずに交差点に進入し,被害車両6.8㍍くらいの距離にまで接近したという加害車両の過失を90%としています なお,加害車両との衝突を避けるため被害車両は中央分離帯先端部や歩道上に設置された物に衝突しました。
(名古屋地裁 平成22年7月9日判決)。

同じ直前での右折開始でも加害車両の過失を80%としてものがあります(横浜地裁 平成24年6月29日判決)。
道路状況や両車両の位置の違いによるものと思われます。

T字路交差点内の直前での右折開始では,加害車両の過失を75%としたものがあります(横浜地裁 平成24年7月30日判決)。
T字路交差点だからということではなく被害者(自動二輪車)の速度超過が理由と考えられます。

2 不適切な車線変更とは,どのような場合ですか。  (クリックすると回答)


非接触事故の1つの典型例といえます。
ほとんどが,同一方向を走行していた他車線の後続車両との事故です。
進路変更の合図の遅れ,あるいは出し忘れ,あるいは車線禁止違反があったりしたために,被害者車両の走行を妨害して,「運転方法を著しく変更させる措置をとることを余儀なくさせる場合」には衝突に比すべきものと言うことです。

加害車両の車線変更時の運転方法により後続車両あるいは並走車両に危険を与えて転倒事故に至ったパターンのものが多いと言えます。

Y乗用車が車線変更時,衝突を回避しようとしたA自動二輪車が転倒,Aが死亡した事案について,過失割合をY80%,A20%としました(大阪地裁 平成20年3月27日判決)。

本件は,四輪車が右へ進路変更するに際し,後続直進の二輪車に衝突の危険性を与えてしまって,急制動により路上に転倒滑走させた事案である。いわゆる非接触の事故ではあるが,以上の事故態様に照らし,一般の進路変更の際の衝突事案に準じて取り扱って差し支えないとしています。

さらに,YタクシーがX原付自転車に気付かないまま車線変更しながら減速したため,Xに急ブレーキをかけさせて転倒させた事案では,ウインカーを出さずに車線変更しながら減速してくるのに気付いてXが急ブレーキをかけることはやむを得ないとして過失相殺を否定しています(東京地裁 平成22年7月21日判決)。
同様に,被害車両に気付かないまま,ウインカーを出さずに左にハンドルを切り,加害車両の左半分程度を第1車線内に進入させたため,第1車線をほぼ同速度で並走していた被害車両が加害車両との衝突を避けようとして転倒した場合も過失相殺を否定しました。

加害車両の行動が危険な上で予測が不可能という理由からです。
(東京地裁 平成22年11月24日判決)


進路変更は,同一車線上の進路変更ではなく,第2通行帯から第1通行帯へと進路変更した場合も同様に考えられます(横浜地裁 平成23年10月27日判決)。
同一車線上の進路変更ではなく,第2通行帯から第1通行帯へと進路変更しようとしていたにもかかわらず,その直前で合図をし,左後方の確認も不十分であったことは明らかであるとして,加害車両の過失を80%としています。

3 転回(Uターン)方法が不適切とは,どのような場合ですか。  (クリックすると回答)


転回(Uターン)によって対向車線を走行している車両を妨害してブレーキあるいはハンドル操作の結果被害者を転倒させたものであり「運転方法を著しく変更させる措置をとることを余儀なくさせる場合」には衝突に比すべきものと言うことです。

特に,幹線道路(東京地裁 平成18年3月28日判決)あるいは片側3車線道路(横浜地裁 平成24年9月13日判決)では転回(Uターン)が行われますが,その場合には,対向車線あるいは他車線の車両の動静に注意して妨害しないように転回(Uターン)する義務があります。
それを怠った方法での転回(Uターン)は,非接触事故であっても大きな過失となります。

但し,被害者も減速をしなかった場合には10%の過失相殺をされる(東京地裁 平成18年3月28日判決)ことがあります。
しかし,転回(Uターン)が被害者の車両に急ブレーキ等の回避措置が執れないくらいの直前で行われたような場合では,被害者が制限速度をやや超過していたとしても過失相殺しない(横浜地裁 平成24年9月13日判決)とされます。

4 対向車線からの急右折とは,どのような場合ですか。  (クリックすると回答)


片側2車線道路で,反対側車線の路外駐車場に右折進入しようと右折した加害車に,対向車線を直進してきた原付自転車が加害車との衝突を避けようと,左ハンドルをきった際,走行の平衡を失ない転倒したものです。
これは直進中の被害者車両の目の前に走行を妨害することが危険と判断されたのです。(京都地裁 平成13年9月28日判決)
なお,被害者にも20%過失相殺がされました。

5 停車車両の急発進とは,どのような場合ですか。  (クリックすると回答)


停車していた車両(ゴミ収集車)がハザードのままで右折発進したことが,後続車両(自動二輪車)の走行を妨害する危険なもので衝突にも比すべきとされました(大阪地裁 平成6年7月5日判決)。
ゴミ収集車が停車していた右側には走行し得る区間がないと誤信しやすい状況にあったために,後続の車両に対して危険な行動であったと言うことでした。
なお,被害者の自動二輪車もかなりの高速度で走行していたため,過失相殺60%となりました。

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