Q.頚椎捻挫(むち打ち)での神経学的検査にはどのようなものがあり,どのような意味がありますか。
頚椎捻挫における神経学的検査には,
スパーリングテスト,ジャクソンテスト,握力検査,徒手筋力テスト等があります。
これらは,治療の継続あるいは,後遺障害認定に重要なものです。
スパーリングテストは,患者の頭部を後屈かつ側方へ屈曲させ,検者は頭頂部に両手で下方に向けて圧迫を加えるものです。
陽性=+,陰性=-のいずれかで記載されます。反応があれば陽性,なければ陰性です。陽性とは,この圧迫で上肢に疼痛・放散痛がおこることです。
陽性であれば神経根症が疑われます。
放散痛=強い刺激が刺激の作用点以外に,特に作用点の周辺に,刺激作用や痛みを引き起こすことを言います。要するに痛みが周囲に広がっていくことです。
スパーリングテストと同様に神経根症状誘発テストです。
ジャクソンテストは,患者の頭部を背屈させ,検者は前額を下方へ押さえるものです。
陽性とは,この圧迫で上肢に放散痛がおこることです。
陽性であれば神経根症が疑われます。
上肢の筋力低下を大まかに簡単に見るためのものです。
通常はいわゆる握力計を用いますが,関節リウマチなどで握力が著しく低下している場合には水銀血圧計を改良した握力計を用いることがあります。
数値として明らかに左右差あるいは,両手ともの低下が見られることは多くあります。
個々の筋肉で筋力が低下しているかどうかを徒手的に,つまり検者の手を使って評価する検査方法です。
頚部神経症状では,上肢の筋肉において筋力低下が見られるかがテストされます。そして,頚椎からの神経根の支配領域に対応する筋力低下が診られるかがテストの目的です。
筋力テストは5を正常としてゼロまでの6段階で評価され,中間的と判断されると5-,4+とか表現されることがあります。3は抵抗が加わると関節が全く動かない状態を言うために,筋力低下が疑われます。
頚部神経症状のために筋力テストが行われるのは,上肢の次の筋肉になります。
①三角筋
②上腕二頭筋
③上腕三頭筋
④手関節伸展筋
⑤小指外転筋
(1)筋萎縮検査とは
筋力テストと同様に頚椎からの神経根の支配領域に対応する筋萎縮が診られるかがテストの目的です。
麻痺が続いていくと筋萎縮が生じるからです。上腕と前腕について周りの長さの計測により行います。
まさしく客観的な所見として重視されます。
(2)腱反射とは
まずは,次の①から③までの四肢の腱反射を検査します。
亢進あるいは減弱の異常が見られれば④から⑦までの病的反射をチェックします。このチェックは陽性か陰性かを判断します。
亢進は中枢性麻痺として大脳から脊髄の障害です。従って,脊髄(頸髄)損傷あるいは脳損傷を疑うべきであり,神経症状は末梢神経の障害ですので,反射は減弱つまり低下,消失を示します。
①上腕二頭筋
②腕橈骨筋
③上腕三頭筋
④バビンスキー
⑤ホフマン
⑥トレムナー
⑦ワルテンベルグ
(3)手指巧緻運動とは
書字,食事,ボタンのかけ外し等の動作の障害があるかどうかです。
この障害があれば神経根症よりも脊髄症と診断されます。
(4)膀胱・直腸障害とは
頻尿,排尿遅延,尿勢低下,残尿感などの排尿と排便の障害です。
男性では前立腺疾患に原因することもあり,客観的な評価が必要なため肛門反射,残尿測定,シストメトリーを検査して神経因性膀胱の有無を確認します。
この障害があれば神経根症よりも脊髄症の可能性が疑われます。