Q.交通事故で死亡した夫が生命保険金を受取人を生前に妻以外に変更していたならばどうなりますか。---交通事故賠償は,むさしの森法律事務所

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A.


具体的には,夫は,妻を保険金受取人とする生命保険に加入していたところ,交通事故で死亡した。ところが,事故の前に,受取人を妻から母親に変更していた。妻は,生命保険についての請求は何もできないのか。妻から不倫相手に変更していた場合はどうなるかと言うことが考えられます。(生命保険契約締結は,保険法施行平成22年4月1日以降の場合)

母親への受取人変更は有効となり,母親へは何も請求できないと考えられます。
不倫相手への受取人変更は無効となり,保険=保険会社に対して無効を主張して自分に支払うように妻は主張できると考えます。ただし,夫との別居が長期化して重婚的内縁関係とされる場合には,判断が微妙となる可能性があります。

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1  生命保険金の受取人の変更は可能ですか(クリックすると回答)

平成22年4月1日施行の保険法は,従来の商法を改正して明文で保険金受取人の変更を認めています。第43条1項で「保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。」としているのです。

【参考条文保険法】
(保険金受取人の変更)
第43条 保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。
2 保険金受取人の変更は、保険者に対する意思表示によってする。
3 前項の意思表示は、その通知が保険者に到達したときは、当該通知を発した時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、その到達前に行われた保険給付の効力を妨げない。


2 生命保険金の受取人の変更の方法はどうですか。(クリックすると回答)

保険法によって,受取人の変更は保険者に対する意思表示が必要となります(保険法第43条2項)。保険者とは,保険会社のことです。

【参考条文保険法】
(保険金受取人の変更)
第43条 保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。
2 保険金受取人の変更は、保険者に対する意思表示によってする。
3 前項の意思表示は、その通知が保険者に到達したときは、当該通知を発した時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、その到達前に行われた保険給付の効力を妨げない。

3 そうすると,母親への変更は有効でしょうか。(クリックすると回答)

保険法の要件を満たしている者であれば有効となります。



4 仮に平成22年3月31日までに契約締結された生命保険であればどうですか。(クリックすると回答)

保険法施行前は,受取人変更権を生命保険契約締結時に契約者と保険者との間に留保された場合にのみ変更できるとされていました。
また,変更の方法については,規定がなかったために解釈上は新旧受取人に対する変更の意思表示でよいとされていました。 
したがって,母親への変更は有効となります。

5 不倫相手方への変更はどうでしょうか。

そのような不倫相手を受取人指定する生命保険契約の締結は,不倫関係を維持していくための目的となり公序良俗に反するとして無効となると考えられます。また,そのことから,受取人を妻から不倫相手に変更することも公序良俗に違反して無効となり,受取人は妻のままと解釈されることになります。
しかし,夫との別居期間が長く,不倫相手との同居が内縁関係と認められるような重婚的内縁関係の場合には,そのような契約も公序良俗に反しないとされる可能性があります。



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