Q.むち打ち(頚椎捻挫)の一般的な症状経過と症状固定時期とは,どうなっていますか。交通事故による賠償では,どのような関係がありますか。
むち打ち(頚椎捻挫)の一般的な症状経過については,急性期と,それを過ぎてからの慢性期とに分けられています。
慢性期のありかたで治療期間と症状固定の時期が定まってきます。
また,慢性期の段階になってから,治療費の打ち切りが行われる可能性があります。
打ち切りに際して「症状固定」といわれることがありますが,その言葉の意味を正しく理解をしておく必要があります。
この点を十分に理解をして対応しなければ賠償において結果的に不利益を被ることがあり得ます
1 むち打ちは,初診が重要です。1週間ルールとは何でしょう。(クリックすると回答)
(1)むち打ちの痛みはいつ頃から出現しますか。
一般的には,翌日痛くなると言われるように,ほとんど24時間から48時間以内とされています。
むち打ち(頚椎捻挫)は,首の周囲の筋肉・靱帯等の断裂による出血と腫れが生じます。
それは,受傷してから数時間で安定して,それ以上はほとんど進展しないとされています。
また,神経圧迫があって神経根の周囲の腫れが生じたとしても,一般的には24時間以内に完成するとされています。
(2)初診の重要性とはどういうことですか。
二つの点が指摘できます。
①どんなでも事故から1週間以内に整形外科を受診すること
仮に事故から1週間経って痛みが生じてきたので,受診したとします。
診察した医師が事故によると診断したとしても,一般的な症状出現時期としては,遅すぎるとされます。
仮に,痛みがあったが,なかなか医療機関を受診できなかったというならば,その合理的な説明が必要となります。
②痛みのある部位についてレントゲン写真を撮影してもらうこと
むち打ち(頚椎捻挫)では,脱臼骨折はないので,レントゲン写真で何か有用な所見が見つけられると言うことでありません。
しかし,意味がないのかというと痛みを訴えている以上は,放射線を当てて写真を撮る必要があります。
仮に,レントゲン写真も撮影していないということならば,痛みの存在を疑われかねません。
2 むち打ちの慢性期における保険会社に対応はどうなりますか。(クリックすると回答)
(1)慢性期とは何ですか。
損傷した部分だけではなく,正常な部分も含めて首全体があるいは,周辺の肩等を含めて弾力性や可動性を失っていたり,減退したりしていますから,機能全体の回復を含めて急性期を考えて受傷後3ヶ月を急性期としています。
しかし,受傷後3ヶ月で筋肉や靱帯等の損傷が完全に回復するのかは,年齢を含めた個体差(個人差)を考慮しても一律にすべての人に該当するのかが問題となるのです。
急性期以降を一般に慢性期としているようです。
慢性期というのは,症状が常態化しつつあるということです。
(2)むち打ちの慢性期は,何が起こるのでしょうか。
痛みが続く理由は,医学的には,日常的でありながら難しいとされています。
しかし,むち打ち(頚椎捻挫)の最大の問題点は,そのような痛みを生じる原因が画像等で他覚的には証明されないことです。
そこで,治療の打ち切りという問題が起こってきます。
それが,一括払い制度における打ち切りという問題です。
あるいは,接骨院(整骨院)における目安料金の問題です。
3 むち打ちの症状固定とは何ですか。症状固定となるとどうなりますか。(クリックすると回答)
(1)症状固定とは何ですか。
「症状固定」とは,「医学上一般に承認された治療方法をもってしても,その効果が期待し得ない状態で,かつ,残存する症状が,自然的経過によって到達すると認められる最終の状態」を言います。
そして症状固定をもって後遺障害等級認定が行われるのです。
(2)症状固定とするとどうなりますか。
症状固定日以降の治療費は,原則として賠償の対象とはなりませんし,休業損害も否定されます。
つまり,症状固定日以降は,治療費も休業損害も支払われなくなるのです。
(3)むち打ちでの症状固定の使われ方は,どうですか。
むち打ちだからといって特別なことはありません。
しかし,現実にはむち打ち(頚椎捻挫)に関しては損害保険会社(共済)が治療費の支払いを打ち切る「ことば」として用いられている傾向があります。
特に注意すべきなのは,6ヶ月未満の治療期間で症状固定をした場合に,後遺障害に認定される可能性はないということです。
(4)むち打ちでは,どういう場合に症状固定と言われやすいでしょうか。
次のような記載が診断書にあると症状固定とされやすいと言えます。
なお,以下の事柄が現実に当てはまるならば後は自然治癒に任せるという選択をすべきです。
○改善傾向にある
○まだ痛みは残るが,天候・温度・湿度次第で軽減(緩解)したり増悪したりする
○動作時(運動)痛のみが残る
○仕事に復帰したが体を動かしたため痛みがぶり返した
4 受傷後の3ヶ月,6ヶ月,9ヶ月というのが節目とは,どのような意味ですか。(クリックすると回答)
(1)3ヶ月
3ヶ月というのは,まさに既に述べたように慢性期に入る頃です。
しかし,3ヶ月で打ち切りをするというのは,車両の損傷状況や,それまでの通院頻度で判断されることが多いと思われます。
多くは,慢性期としても,プラス1,2ヶ月前後までは,打ち切りをせずに治療の継続を認めて,その後に症状固定を言って後遺障害認定を案内することが多いと思います。
(2)6ヶ月
それまでに,症状固定として打ち切りをしてくる可能性が大きいと言えます。
受傷後6ヶ月前後でMRI画像検査を保険会社(共済)受けるように言ってきた場合には,神経圧迫があるかどうかを判断してもらいなさいという意味です。
あるいは,既にその前にMRI画像検査がされていたとすれば,神経圧迫がないと言うことが既に判明していれば,受傷後6ヶ月前後で確実に打ち切りをしてくるはずです。
(3)保険会社(共済)から打ち切りを宣告された場合
保険会社(共済)から打ち切りを宣告された場合に,「打ち切り」とは,治療費の支払いの打ち切りを言います。
自由診療で支払っていたとしたならば,その支払いをやめる。あるいは,健康保険を使用して治療していた場合に,自己負担分の精算をしてくれない,と言う意味です。
この場合に,健康保険に切り替える,あるいは既に切り替えていた場合には,そのまま健康保険を使用しながら,自己負担分をして治療を継続するか,検討することになります。
ただし,その後,自己負担分をしたものに対して相手方の保険会社(共済)から結果的に回収できるかどうかはリスクがあることの覚悟が必要です。
(4)途中で治療を中断した場合に再開後の治療費支払ってもらえますか。
むち打ち症(頚椎捻挫)で治療を受けていたが治療を中断して相当に日数が過ぎてから後に,治療を再開した場合に,その後の治療の必要性は疑問です。つまり,再開後の治療は事故とは関係のない原因での症状に基づく治療だと考えられるからです。
自賠責保険の実務として後遺障害認定において,治療に1ヶ月以上のブランクがあると,「一貫性がない」という理由で後遺障害非該当にすることが,通例です(「1ヶ月ルール」)。
この「1ヶ月ルール」に相応する形で,損害保険会社(共済)から再開後の治療期間の治療費も,休業損害も,慰謝料も認めないという対応がされることが,ほとんどです。
その意味では,致命的です。
他の病気あるいは妊娠出産等の説明が付かない限り,治療のブランクを作るべきではありません。
5 休業損害が認められる期間とは,どのくらいですか。(クリックすると回答)
基本は,急性期の初期段階である3,4週間以内とされるのではないでしょうか。
その期間は安静期でもあるからです。しかし,それも絶対ではありません。
車両損傷状況等により,その期間内さえも否定してくる場合もあり得ます。
なお,一旦,復職したが,その結果,悪化したと言うことになれば,事情は別としても,自ら悪化させたとして保険会社(共済) によっては,休業損害の支払を否定したり,渋ることも考えられます。
安静期の3,4週間を超えて,休業損害が支払われることが絶対にないとは言えません。
神経根症状,つまり神経圧迫が当初から認められる場合にはある程度の期間を休業することはやむを得ないと判断されるでしょう。
また,そうではなくとも,職種・家庭環境等によっては,一定期間の安静あるいは回復を待たないと復職が困難な場合もあります。しかし,神経圧迫が認められない場合においては,慢性期に至る3か月間の休業損害が認められることはまずないと考えられます。
---------------------------
むち打ち(頚椎捻挫),腰椎捻挫 )の慰謝料(リンク)
接骨院(整骨院)における目安料金リンク)
一括払い制度における打ち切り(リンク)
むち打ちにおける12級,14級,非該当の分かれ道(リンク)