Q.歩道上での自転車と歩行者の交通事故における過失については,どのように考えるべきでしょうか。
歩道は,自転車の通行は原則として許されておりません。
極めて例外的に通行が許されております。
自転車が例外として歩道を通行できる場合であっても,自転車は歩道中央から車道寄りの部分を徐行しなければならず,歩行者の通行を妨げることとなるときは,一時停止をしなければなりません(道交法63条の4第2項)
したがって,基本的には,歩行者の過失はゼロであり,自転車が100%悪いと考えるべきでしょう。
具体的に考えてみます。
(1)同一方向に進行する歩行者と自転車の場合
これは,自転車が歩行者に追突したものと考えられ,歩行者の過失相殺率はゼロと言うべきです。
(2)対向方向に進行する歩行者と自転車の場合
端的に言えば,正面衝突です。
自転車が,一時停止義務を果たしていれば十分に防止できたはずです。
対面なので,歩行者に信義則から見て結果発生と相当因果関係がある高度な義務違反がある場合に限り修正要素として過失相殺を認めるべきです。
例えば,歩行者がふらつきながら歩いていたような場合です。
ふらふら歩いていた原因等にもよると思われますが,せいぜいが10%であり,それ以上とするには,特段の事情が必要と考えます。
(3)自転車直進中に歩行者が交差して歩道に入ってきた場合
要するに,歩行者の歩道外からの歩道への進入という形態です。
これについて,実際の裁判例においても,
歩行者の信義則違反を認めて10%の過失相殺を認める説(A説),歩道は歩行者が通行すべきことを貫いて過失相殺をゼロとする説(B説),自動車通行が認められた歩道であるかによりゼロと10%を区別する説(C説)に分かれています。
(4)歩道に歩行者が佇立していた場合
佇立というのは,立ったままでいることです。
この場合には,歩行者が信義則上で何かに違反するというのはあり得ません。
歩道は歩行者の通行する場所です。
歩行者には,過失は全くないと考えます。自転車は,停止して,歩行者の動きをよく見て必要があれば,声掛けをすればいいからです。