Q.高次脳機能障害の学術的な定義・行政的な定義・自賠責保険の定義とは何ですか。
高次脳機能障害の学術的な定義・行政的な定義・自賠責保険の定義は,重なる部分もありますが,それぞれにおいて異なっています。
特に,行政的な定義は福祉サービスの観点からのものであり,いわゆる手帳を取得していることが,自賠責保険の高次脳機能障害認定に直結することはありません。
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高次脳機能とは,学術的には,言語,行為,認知,記憶,注意,判断などの働きを意味しており,
高次脳機能障害とは,失語,失行,失認,健忘,注意障害,判断障害を指しています。
行政上の福祉サービスのための定義です。従来は,失語症のみが身体障害者手帳の交付対象とされており,学術的定義の「高次脳機能障害」に対する福祉の道が閉ざされておりました。
そこで,2001年厚生労働省「高次脳機能障害者支援モデル事業」によって,高次脳機能障害とは,記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害と定義されました。
その結果,高次脳機能障害は,精神障害者保健福祉手帳の申請が可能となりました。
なお,この行政的な定義,つまり,精神障害者保健福祉手帳の申請の点においては,障害認定を精神科医以外でもできるようになりました。
損害保険料率算出機構平成23年3月4日「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について(報告書)p10」によれば,明確な定義を設けてはいませんが,
脳外傷後の急性期に始まり多少軽減しながら慢性期へと続く,次の特徴的な臨床像であるとして,典型的な症状として「多彩な認知障害,行動障害および人格変化」としております。
4 ICD-10の「器質性精神障害」と自賠責保険の認定における定義(クリックすると回答)
「器質性精神障害」とは,脳そのものの器質的病変や,全身疾患による中枢神経障害等を原因として何らかの精神障害を起こすことを示す行政的な「高次脳機能障害」定義です。
日常生活や社会生活に支障があると診断されると精神障害者保健福祉手帳の申請が可能となります。
しかし,症状や日常生活や社会生活に支障がある点で,自賠責保険の認定における「高次脳機能障害」と類似ないし一致していますが,前提としての原因あるいは要件として重なる点もありながら,異なる点があります。
したがって,「器質性精神障害」として精神障害者保健福祉手帳の申請し取得しても,それが自賠責の脳外傷を原因とする「高次脳機能障害」認定につながるものとは言いきれません。