Q.局部の神経症状に対する後遺障害(後遺症)12級13号又は14級9号の労働能力喪失期間は短縮されてしまうのですか。
かなりの可能性で,むち打ち(頚椎捻挫)と同様に期間の制限がされます。
しかし,場合によってはやり方により,喪失期間の制限をなくしたり,あるいは長めにすることは可能です。
1 むち打ち(頚椎捻挫)の場合はどうですか。 (クリックすると回答)
後遺障害(後遺症)12級13号は「局部に頑固な神経症状」,14級9号は「局部に神経症状」が残る場合です。
そして,労働能力喪失期間については,訴訟において,後遺障害(後遺症)12級で10年間,14級で5年間とされるのが一般的になっています。
交渉段階では,さらにそれよりも短縮される実態があります。
後遺障害(後遺症)とは,本来は永久不変の状態であるはずが,なぜ,むち打ち(頚椎捻挫)については年数を限定されてしまうのか,その理由については,状態になれるとか,本人の努力で克服が可能であると,様々です。
しかし,結論については,支持する学説が圧倒的です。
そして,神経症状と言うことで,むち打ち(頚椎捻挫)の場合以外にも同じ考え方をするかどうかが問題となります。
2 むち打ち以外の神経症状の場合はどうですか。 (クリックすると回答)
学説としては,むち打ち(頚椎捻挫)と同様に考えるもの,あるいは,それに懐疑的なものと,大きく分かれているようです。
そして,神経症状と言っても,種類が色々考えられます。
(1)むち打ち(頚椎捻挫)同様の捻挫系
(2)骨折後の癒合不全によるもの
(3)脳挫傷あるいは脊髄損傷に伴う神経症状
(4)自賠責等級認定は神経症状に該当し,他方可動域制限はあるものの非該当であるもの
(5)非器質的な神経症状
一律には言いにくいでしょうが,
(1)むち打ち(頚椎捻挫)同様の捻挫系
(2)骨折後の癒合不全によるものについては,
1でのとおり,12級で10年,14級で5年と限定をする傾向にあると言えます。
他方で,
(3)脳挫傷あるいは脊髄損傷に伴う神経症状
(4)自賠責等級認定は神経症状に該当し,他方可動域制限はあるものの非該当であるもの
(5)非器質的な神経症状
は,限定しない傾向にあると言えます。
特に(3)脳挫傷,脊髄損傷に伴う神経症状には,少なくとも喪失期間を限定する考え方をしない。あるいは,かなり期間を長く見ている傾向にあると言えます。
しかし,一般的に若年者の場合には,神経症状に対する対応性を考慮して喪失期間は短縮される傾向にあります。
裁判所の基本的な考えは,
「被告(賠償側)の反証がなされたときに,原告の後遺障害の具体的な内容や程度等に応じて,就労可能な終期までのうちの限定された期間において労働能力喪失期間が認められることもある。」
(交通損害関係訴訟 佐久間邦夫,八木一洋著 青林書院 p172)。
そこで,神経症状としても具体的な障害の内容あるいは,就労に対する影響を丁寧に主張立証する必要が被害者側としてはあると言えます。