Q.外傷性手根管症候群とは何ですか。後遺障害(後遺症)となりますか。
橈骨骨折あるいは手根骨骨折後の変形等で外傷として手根管症候群が起こりえます。
手根管症候群とは正中神経に対する圧迫性の神経障害です。
手関節の運動制限あるいは疼痛の残存することによる後遺障害(後遺症)の可能性があります。
手根管症候群(CTS)=carpal tunnel syndrome とは,
手根管(シュコンカン)内における正中神経(セイチュウシンケイ)の圧迫麻痺で,最も頻度の高い絞扼性(コウヤクセイ)神経障害です。
外傷による橈骨や手根骨(シュコンコツ)の骨折後の変形によっても生じるとされています。
手根管と正中神経との位置関係については,イラストを参考にして下さい。
2 手根管(シュコンカン)と手根骨(シュコンコツ)とは(クリックすると回答)
手根管とは,手関節部掌(テノヒラ)側で手根骨と屈筋支帯(線維鞘)によって作られているトンネルで,その中を正中神経が通っています。
手根骨とは,手を構成するものに指骨・中手骨(チュウシュコツ)・手根骨とがあり,手関節つまり手首に一番近い骨です。
手根骨は,手根部にある8個の短骨の総称。舟状骨,月状骨,三角骨,豆状骨の近位列の4個と,大菱形骨,小菱形骨,有頭骨,有鉤骨の遠位列の4個からなっています。
3 正中神経(セイチュウシンケイ)とは(クリックすると回答)
脊髄神経根C5~T1(頚髄第5番から胸髄第1番まで)から発して,腕神経叢(ワンシンケイソウ)を経て前腕回内筋,長指屈筋,母指の外転筋と対立筋を支配し,さらに手掌橈側(トウガワ,注:橈側は母指側)の感覚繊維を含みます。
正中神経麻痺についてはこちらへ(クリック)
4 絞扼性(コウヤクセイ)神経障害とは(クリックすると回答)
絞扼性ニューロパチー,圧迫性神経障害ともいいます。
末梢神経幹が外部から,または骨や靱帯等の周囲の構造物によって局所的な圧迫を受けることによって末梢神経の脱髄や軸索の障害が生じることを圧迫性神経障害といいます。
その中で,さらに手根管や足根管のような狭い部位で締めつけられるような圧迫が生じて末梢神経障害が生じるものを絞扼性末梢神経障害といいます。
(1)麻痺の所見
(2)ティネル徴候(Tinel
Sign)
知覚神経損傷部の高位診断と神経再生が順調に末梢に伸展しているかを調べるものです。
叩打して,該当する神経の支配領野に限局して電撃性放散痛が生じるものがチネル徴候です。
ティネル徴候についてはこちらへ(クリック
)
(3)手関節屈曲テスト,Phalen(フェイルン,ファーレン)テスト
手関節掌屈位保持による正中神経支配領域の疼痛,あるいはシビレの増強
(4)正中神経圧迫テスト
正中神経の皮膚の上からの持続圧迫による症状の増強
(5)電気生理学的検査(神経伝導速度検査など)
正中神経の終末潜時の遅延の有無
まれに,橈骨(遠位端)骨折に関して手関節の機能障害が残存することがあります。
その場合には,可動域制限の程度に応じて8級6号(用廃),10級10号(著しい機能制限),12級6号(機能制限)の可能性があります。
また,外傷性手根管症候群は,変形治癒を残した橈骨遠位端骨折と同時に起こり,その結果として疼痛が残存した場合には,12級13号(局部の頑固な神経症状)あるいは14級9号(局部の神経症状)となる可能性があります。