Q.肘関節の可動域制限についての後遺障害(後遺症)は,何級ですか。
1 肘関節の可動域制限の対象となる運動は何ですか。(クリックすると回答)
9 12級6号(単なる障害)になるのは,どのようなものですか。(クリックすると回答)
橈骨・尺骨骨幹部骨折(リンク) 関節拘縮・強直(リンク)
肘関節の主要運動は,屈曲・伸展です。
制限の程度によって,8級6号(用廃),10級10号(著しい障害),12級6号(単なる障害)と認定されます。
また,前腕の主要な運動である回内・回外については,関節の機能障害に準じて評価されます。
それは,屈曲・伸展の主要運動だけです。
肘関節の認定に参考運動はありません。
2 屈曲・伸展は,どういう運動ですか。(クリックすると回答)
屈曲は,肘を曲げること,伸展は下に伸ばすことです。
3 その可動域の測定はどうやるのですか。(クリックすると回答)
健側(負傷していない側)と患側(負傷した側)とを比較して,自動ではなく他動で比較をします。
屈曲・伸展は同一面での運動であるために,その合計で測定します。
4 回内・回外の可動域制限は,肘関節の後遺障害とならないのですか。(クリックすると回答)
肘関節の可動域制限の対象となるのは,屈曲・伸展だけです。
ただし,回内回外の可動域制限については,前腕の後遺障害として認定対象となっています。
5 肘関節の可動域制限を生じさせる外傷にはどのようなものがありますか。(クリックすると回答)
外傷性肘関節脱臼(骨折),肘頭骨折,希ですが上腕骨遠位端骨折です。
なお,前腕の回内・回外については,橈骨・尺骨骨幹部骨折あるいは,モンテジア骨折です。
6 肘関節の可動域制限は,どのような等級の後遺障害となりますか。(クリックすると回答)
制限の程度によって,8級6号(用廃),10級10号(著しい障害),12級6号(単なる障害)と認定されます。
7 8級6号(用廃)になるのは,どのようなものですか。(クリックすると回答)
次のいずれかに該当するものです。
a. 関節が強直したもの
関節強直とは,関節自体が癒着して可動性をまったく喪失した状態を言います。
認定においては,完全強直を言います。つまり,関節が全く可動しないか,またはこれに近い状態を言います。
「これに近い状態」とは,健側の可動域の10%程度以下(5度単位で切り上げて計算します。)に制限されたものをいいます。
b. 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
「これに近い状態」とは,他動では可動するが,自動では健側の可動域の10%程度以下(5度単位で切り上げて計算します。)に制限されたものをいいます。
なお,完全弛緩性麻痺の場合には,他動ではなく自動で見ます。
c. 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち,その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
8 10級10号(著しい障害)になるのは,どのようなものですか。(クリックすると回答)
次のいずれかに該当するものです。
a. 関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
b. 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち,その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されていないもの
関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものです。
10 肘関節の構造は,どうなっていますか。(クリックすると回答)
肘関節は,解剖学的には1つの関節腔をもつ1つの関節です。
しかし,生理学的には肘関節固有の蝶番(ちょうつがい)関節しての屈曲・伸展の運動と,車軸関節としての回内・回外回旋運動の2つの機能を持ちます。
そのために,肘関節は関節内に腕橈関節・腕尺関節・(近位)橈尺関節の3つの関節をもつ複関節です。
腕橈関節・腕尺関節は,上腕骨と橈骨,尺骨をそれぞれジョイントするものです。
そして,屈曲・伸展の働きをします。
腕橈骨筋と共に,屈曲では上腕筋が屈筋として,伸展では上腕三頭筋が伸筋として働きます。
回内と回外には,回内筋・回外筋・上腕二頭筋が働いています。
回内筋・回外筋は,尺骨を起始として橈骨を停止する筋肉です。(上腕骨を起始とする部分もあります。)
なお,上腕二頭筋は,上腕骨を起始として橈骨を停止する筋肉です。
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関節の完全弛緩性麻痺(リンク)