Q.外傷によって脳はどのようにして損傷するのでしょうか。

[Gennarelli,びまん性軸索損傷,脳損傷,頭蓋骨,骨折]

A.

頭部外傷,そして脳損傷を発生させる外力には,おもに接触と加速・減速の2つの成分があり,それらが頚椎に支えられた頭蓋(頭蓋骨及びその中の脳)に作用します。
そのために,必ずしも頭部が物体に接触しなくとも損傷が発生することです。
頭蓋骨骨折が無くとも,さらに頭皮などの外傷が無くとも発生する可能性があります。

 

1 接触損傷とは(クリックすると回答)

接触損傷contact injury

圧迫損傷とも言われますが,頭蓋骨が内側へたわみ,頭蓋骨におおわれている脳が圧迫されて損傷する直撃損傷です。
加わった外力の大きさ,時間等で損傷の状態が決まってきます。
この損傷は,鈍器で頭部を殴られたような場合をイメージして下さい。

2 加速-減速損傷とは(クリックすると回答)

加速-減速損傷acceleration and deceleration injury or A/D injury

古くから,接触損傷ではなくとも,頭部が頚椎を支点として,
(1)頭部への衝撃によって水平方向に加速ないし減速される運動をする(並進加速度衝撃),
あるいは,
(2)回転性に加速ないし減速される運動をする(回転性加速度衝撃)ことにより脳損傷が発生するものです。

3 並進加速度衝撃とは(クリックすると回答)

この場合には,静止している頭部に外力が加えられると,頭部には一定の加速度が作用します。
頭部は慣性の法則(いわゆるニュートンの第1法則ですね。)により元の位置にとどまろうとします。
しかし,頭蓋は加速度の作用で動きますから,脳が頭蓋内面と衝突して直撃損傷を起こします。
さらに,動いている頭部が静止している物体に衝突すると,頭蓋は停止しますが,脳は停止しないために,頭蓋内面に当たって損傷する対損傷も伴うことがあります。
これは,歩行者が転倒して頭部を道路に打ち付けたような場合をイメージして下さい。

4  回転性加速度衝撃とは(クリックすると回答)

頭部が頚椎を支点として,回転性に加速ないし減速される運動をすると,脳は異なった物理的な性状を有する組織からなっているので損傷をすることがあります。
この場合には,頭部が物体に接触することがなくとも脳の損傷が起こります。

びまん性軸索損傷(DAI)をはじめとした脳損傷のメカニズムを加速・減速のエネルギー(A/Dforce)が脳の各組織間にひずみを与えて剪断力というべき物理的な力が直接的に加わることで発症する
と説明するのが剪断力説と言う考え方でStrich仮説と呼ばれるものが,我が国ではどちらかというと主流とされています。

5 頭蓋骨骨折と脳損傷の関係はどうですか(クリックすると回答)

頭蓋骨骨折がなければ脳損傷が起こらないとは限りません。この点についてはこちらへ(クリック)
また,直接的な打撃が頭部になければ脳損傷が起こらないとも限りません。
それは,回転性加速度衝撃を考えれば明らかです。
頭部が頚椎を支点として,回転性に加速ないし減速される運動をすると,脳は異なった物理的な性状を有する組織からなっているので損傷をすることを理解していただきたいと思います。

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