Q.運転代行業者に同乗して負傷した車両の持ち主は自分の車両の自賠責保険金を請求できますか。
A.
1 何が問題となるのでしょうか。
お酒を飲んだため運転してはならない場合には,自分の車で帰宅するに際して,運転代行業者を頼んで運転してもらって自分は同乗することは良くある話です。
その時に代行業者の過失で同乗していた自分がケガをした場合にはどうなるのかと言うことです。
自分の車ですから,通常で言えば運行供用者(自賠法3条)です。しかも,同乗しているのですから,運行の支配もあり運行の利益もありそうです。
このような場合であっても,「他人」として賠償の対象となるのかというのが問題となります。
自賠法上で,他人ではない「本人」となると,自賠責保険金も受領できなくなり深刻ですね。
2 結論
まず,運転代行業者は,直接に運転をしているのですから運行供用者に該当します。
しかし,ケガをした自分も持ち主ですから業者に安全な運転をするように指示する義務があったとも言えます。
でも,飲酒していたので代行を頼んだのに酷だとも言えます。
この点については,
「代行業者と頼んだ両者の関係からすれば,事故当時において,本件自動車の運行による事故の発生を防止する中心的な責任は代行業者が負い,本来の持ち主の運行支配は代行業者に比べて間接的,補助的なものにとどまっていたものというべきである。したがって特段の事情のある場合に該当して,自賠法3条の「他人」に当たると解するのが相当である。」(最高裁平成9年10月31日判決)とするのが,判例です。