Q.集中治療室に入院中の場合に,家族の付添看護費は,認められますか。

[入院付添費,名古屋地裁平成25年2月27日,東京地裁平成24年11月30日,看護,近親者,集中治療室]

A.

考え方としては,肯定・否定,あるいは一部肯定(交通費相当額)と分かれます。
判決例も,その3通りに分かれているようです。
なお,受傷後に死亡した場合については肯定される可能性があると言えます。

1 何が問題となるのか (クリックすると回答)

入院した場合に,付添費が認められることがあります。それは,「医師の指示又は受傷の程度,被害者の年齢等により必要があれば」となっております(2014年版損害賠償算定基準,いわゆる赤い本p10)。
集中治療室に入院している場合には,生死の境をさまようような重症であり,家族が病院に駆けつけることは当然です。

しかし,集中治療室ということからは,「付添」をしても被害者である家族のためになすことは無いとも言えます。
つまり,近くに待機していることと,「付添」とは性格が異なるのではないかと言うことです。

2 考え方はどうか (クリックすると回答)

裁判例からは,3通りあり得ます。
(1)否定する
例えば,
①入院4日後に死亡したもの高松地裁丸亀支部平成8年3月28日判決,
②平成元年7月30日の事故で脳挫傷により同年8月1日には脳死と診断され,そのままの状態で同月17日午前8時30分心停止するに至った大阪地裁平成2年12月17日判決

大阪地裁判決は,「近親者が看護をなしうるような状態ではなかったことが認められ,そうだとすると,右入院期間中,原告らが被害者(当時21歳)に付き添っていたのは,同人の回復を祈りつつ容体の推移を見守っていたのにすぎないことになるから」と理由を述べています。

(2)肯定する
例えば,当時中学校1年生で,脳挫傷により事故から14日後に死亡した大阪地裁平成9年2月7日判決
なお,「社会常識上近親者による付添看護の必要性を認めるのが相当である」
と理由を述べています。

(3)両親の交通費相当額を認める例えば,当時20歳の会社員で脳挫傷により事故から15日後に死亡した大阪地裁平成15年5月21日判決
なお,「付添看護の必要性は認められず,看護費用としての損害を認めることはできないと言うべきである。しかしながら,危篤状態にある長男のもとに連日通院する原告ら父母の心情は当然のものであり,少なくとも,その通院に要した費用は,本件事故と相当因果関係が認められると言うべきである。」
と理由を述べています。

3 最近の判決例は (クリックすると回答)

いずれも認めた例です。
(1)東京地裁平成24年11月30日判決
当時70歳の被害者が6日の入院後に死亡したものです。
日額6500円の6日分を認めました。

なお,「亡太郎が本件事故により重傷を負ったことを考慮すると,原告花子らは,亡太郎の入院中に付添いをしたことが推認され,原告花子らが具体的に何らかの看護をすることはできなかったとしても,亡太郎の容態の急変等に対応するため,付き添う必要があったことが推認される。」と理由を述べています。

(2)名古屋地裁平成25年2月27日判決
当時10歳の被害者が42日間の入院後に死亡したものです。
母親に日額6300円の42日間の付添費,父親には休業損害相当分を認めました。

なお,「医師の付添看護の指示があったと認めるに足りる証拠はないとはいえ,亡太郎が本件事故により心肺停止状態に陥り,入院期間中昏睡状態が続いていたことからすれば,両親の声かけなどを必要としたといえる。」と理由を述べています。
ただし,この件は,集中治療室であったかは不明です。

4 考え方は (クリックすると回答)

具体的に何らかの看護をすることができるのかどうか,と問われればできないとしか言えません。急変に対応する,あるいは,声かけをする,ということは正しい意味では「看護」とは癒えないものです。
各判決は,裁判官の価値観あるいは死亡の事例では年齢や遺族の心情への「気持ち」が反映されたものと言えます。

なかなか,認定の基準化は難しいですが,認定した場合の金額としては入院付添費として「赤い本」での日額6500円程度に準拠していると思われます。

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