Q.高次脳機能障害としての社会行動障害とは何ですか。
1 高次脳機能障害としての社会行動障害
これについて,症状としての情動障害あるいは人格変化の枠だけではとらえきれないものを社会脳(social
brain)の考え方が定着してきており,医学を超えた「脳科学」の知見の進歩はめざましいものがあるようです。
2 社会脳(social
brain)
Brothers(1990年)による脳内における社会認知ネットワークの存在に関する提起を受けて,その後の研究の進展によるものです。
それを受けて「こころの理論」仮説,ミラー・ニューロン・システム仮説等が提唱されており,社会認知ネットワークの存在が扁桃体・側頭極等のある程度「局在的」であることも含めて明らかにされています。
言うなれば,脳内における「こころ」が存在が明らかになりつつあると言うことです。
(「脳神経外科学Ⅰ 太田富雄編 金芳堂 p59」)
このことは,人間の認知あるいは社会行動が自然科学として一層明らかになっていくと言うことであると思います。
3 後遺障害としての社会行動障害
情動障害あるいは人格変化というとらえ方が従来よりされており,現在においても,事故前後の状況変化という家族を含めた他者からの観察により判断,認定する現状があります。
あるいは,医療として社会行動障害を診断・治療する上での困難が存在していると思われます。
4 頭部外傷後精神病性障害(PDFTBI)
情動障害あるいは人格変化という枠ではとらえきれない,あるいは,本質に迫ることができないものとしては,「脱抑制,攻撃性,発動性低下,さらには妄想状態(頭部外傷後精神病性障害(PDFTBI)等)」という精神状態があります。
これらについても,社会脳(social
brain)=社会認知ネットワークの障害として脳内の具体的な障害として鑑別が可能となる可能性があります。