Q.顔面神経における核上性麻痺,核性麻痺,核下性麻痺とは何ですか
A.
顔面神経の中枢は前頭葉の中心前回にあり,末梢は表情筋に終わります。
その経路に生じた種々の疾患によって麻痺が生じます。
健側の顔面筋が上半部を除いて麻痺するのが特徴です。その程度は,末梢障害に比べて軽度といわれています。味覚や涙分泌の異常は見られないとされています。
障害部位により第Ⅴ(5)~?(12)脳神経が障害されます。
なお,
第V脳神経 三叉神経
顔面・鼻・口・歯の知覚,咀嚼運動
第VI脳神経 外転神経 眼球運動(外直筋)第VII脳神経 顔面神経
表情筋の運動,舌前2/3の味覚,アブミ骨筋支配,涙腺や唾液腺の分泌
第VIII脳神経 内耳神経 聴覚,平衡覚
第IX脳神経 舌咽神経
舌後1/3の知覚・味覚,唾液腺の分泌
第X脳神経 迷走神経 のどの知覚・運動,頚胸腹部の臓器を支配
第XI脳神経 副神経
肩や首の筋肉の運動(僧帽筋,胸鎖乳突筋)
第XII脳神経 舌下神経 舌の運動
また,眼球運動に関わる構造が隣接するため,病変の広がりによって種々の眼球運動障害が出現するとされています。
さらに,運動障害として健側の片麻痺となる(交差性麻痺)ことがあります。
重篤な中枢神経症状を合併することは少ないが,併走する中間神経や第Ⅷ(8)脳神経=内耳神経(前庭蝸牛神経)の機能障害を伴うことが多いとされています。