Q.むち打ち症の治療をしていたのですが,途中で治療を中断して,その後また痛くなったので治療を再開しました。すると,治療費は支払えないと言われました。
1ヶ月の中断があると,その後に治療を再開しても,後遺障害は非該当です。
訴訟でも,逆転は不可能と言えます。
さらに,治療の中断があった時点で相手方保険会社が打ち切ってくると思います。
むち打ち症(頚椎捻挫)で治療を受けていたが治療を中断して相当に日数が過ぎてから後に,治療を再開した場合に,その後の治療の必要性は疑問です。
つまり,再開後の治療は事故とは関係のない原因での症状に基づく治療だと考えられるからです。
自賠責保険の実務として後遺障害認定において,治療に1ヶ月以上のブランクがあると,「一貫性がない」という理由で後遺障害非該当にすることが,通例です(「1ヶ月ルール」)。
この「1ヶ月ルール」に相応する形で,損害保険会社(共済)から再開後の治療期間の治療費も,休業損害も,慰謝料も認めないという対応がされることが,ほとんどです。
その意味では,致命的です。
リカバリーはできません。その限りでは自己責任あるいは,その範囲の症状であるという事実の問題と言うしかありません。
同じことは,被害者が事故後何らかの事情ですぐに医療機関を受診しないで,事故から相当日数が経ってから治療を開始した場合にも,事故と治療との因果関係がないと言うことで争われる場合もあります。
いわゆる初診の遅れです。ちなみに,1週間以内の医師への診察が必要です。
整骨院での施術だけでは,最近(2014年時点)では,保険会社は支払いを拒否する傾向になってきています。
自賠責が,初診の遅れあるいは治療の中断に対して厳しいことは現実です。
そして,通常で言えば現実に痛み等の症状があれば,通院するはずだろうという一般常識の範囲内の事柄です。
裁判例からみると,平成15年前後頃までは,
中断中も症状が続いていたこと,
中断した理由がそれなりに合理性があること,
再開後の治療によって症状が改善したとみられること,
他に症状の原因となると思われる事柄がないこと等を具体的にみて症状の連続性を認めて救済している例もありました。
その頃までは,「牧歌的」だったと思われます。
しかし,現時点(2014年)は,妥当性や公平性はともかくとして,中断をした場合においては,因果関係が否定されるために救済する手段はないと思います。
なお,出張等でブランクがあくことが当初から本人として分かる場合であれば,出張先でも通院できるように担当医からの紹介状を持参するなどの工夫=自己防衛が肝心です。